II-48号 2008.6.25発行

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群大ノ未来ツクル
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【目次】雨中の熱戦 ザスパ快勝!1月28日の団体交渉を振り返って定期大会のお知らせ労働法のミニ知識「名ばかり店長/偽装管理職」

雨中の熱戦! ザスパ快勝!

5月31日,J2公式戦「ザスパ草津×ロアッソ熊本」を観戦

ザスパ観戦

群馬大学教職員組合は,毎年このシーズンに組合員を募ってザスパの応援に行きます。家族連れで参加する方もいます。今年は5月31日に,組合員と家族48人で敷島のスタジアムに行きました。当日は梅雨入り前だというのに,あいにくの雨模様でした。でも,雨がっぱやポンチョをかぶってメインスタンド中央から熱く応援しました。

試合は,開始早々の前半4分,ザスパ後藤があざやかに先制ゴールを決めました。その後一進一退の展開が続きましたが,後半25分にはザスパ山崎が見事なシュートで追加点をあげ,そのままザスパが2対0で逃げ切りました。写真左は,ザスパ勝利の瞬間,喜びに沸く応援席の組合員です。ザスパはこの勝利を皮切りに4連勝し,順位をどんどん上げました(現在15チーム中6位)。

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1月28日の団体交渉を振り返って 山崎雄介(書記長/教育学部)

さる1月28日に行われた団体交渉については,前号の「ぐんだいタウン」紙上で「地域手当が全キャンパス3%になる見通し」という点のみご報告しました。本号では,団交全体についてご報告します。


《 不払い残業をめぐって 》

■労基署調査後の一定の成果

具体的な成果の挙がった地域手当問題とともに,今回の団交の大きな焦点は,昨年9月に労働基準監督署の調査が入るという事態にまで至った「不払い残業」の問題でした。

大学当局(学長・理事ら法人の経営陣)からは,労基署の立入調査をうけて4か月間にわたり実施した調査の結果が提示され,また改善の必要性については認識している旨の発言がありました。

調査後は,現場の監督者が残業時間の申請を36協定の上限以内に抑制させる問題については,残業手当の支払いはあくまでも実際の労働時間であるとの扱いがある程度徹底され,上記調査で申請されたものについては昨年12月に支払われるという前進がありました。

とはいえ,当局の調査期間は,入試などによる繁忙期が含まれないものであり(もっとも当局は,夏季にいくつかのイベントなどもあり,必ずしも閑散期ではなかったとはいっていますが),まだまだ時間外労働の全貌が明らかになったとはいえません。


表:群大当局による2007年6〜9月の時間外・休日労働時間調査結果

部局(a)延べ人数(b)実績時間(c)遡及時間1人当りサービス
残業時間(c)/(a)
サービス残業比率
(c)/(b)[単位%]
総務部1002,3934654.6519.43
学務部521,0311763.3817.07
研究推進部1071,2541131.069.01
財務部761,6145096.7031.54
施設運営部621,51178512.6651.95
教育学部417003077.4943.86
附属学校24175210.8812.00
工学部2473,8712440.996.30
医学部696481942.8129.94
昭和地区事務部3937,0335,32513.5575.71
機器分析センター434000
総合情報メディア
センター
845000
附属病院2,49024,7573,5491.4314.34
社会情報学部22325000
生体調節研究所16144000
3,71145,53511,6883.1525.67

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■当局調査は時間外労働の全貌に迫っているか ― 組合調査との対比

上記の当局調査(表参照。ただし「1人当りサービス残業時間」「サービス残業比率」はこちらで追加)によると,2007年6〜9月の全部局トータルの時間外・休日労働従事者は延べ3,711人,時間外労働の実績時間は45,535時間,時間外・休日労働手当の遡及支払い対象となる時間(放っておけばサービス残業になってしまっていた時間,以下「サービス残業時間」)は11,688時間となっています。「サービス残業時間」/従事者数比は3.15,大雑把には一月あたり時間外労働従事者1人あたり3.15時間サービス残業が発生していたという計算になります。この比について部局ごとの分布をみると,昭和地区事務部5,325/393=13.6時間,施設運営部785/62=12.7時間,教育学部307/41=6.7時間といったあたりが「ワースト3」となっています。

また,実績時間に占める「サービス残業時間」の比率(サービス残業比率)を算出すると,ワースト3は昭和地区事務部75.7%,施設運営部52.0%,教育学部43.9%と,1人当りサービス残業時間が多かった部局がやはり上位を占めていること,しかもこうした部局では時間外労働の半分から4分の3が「サービス残業」になっていたという驚くべき事実がわかります。

とはいえ,この調査は部局トータルの,しかも比較的短期間のものであり,また,この調査結果は申請された労働時間に対する手当の支払いを前提としていたため,調査回答者が大学財政を慮って「自主規制」した可能性も否定できません。これに対して,本組合が昨年10月〜12月にかけて行ったアンケート調査(桐生支部ウェブサーバを利用したオンラインアンケート。組合加入資格のある全学の事務職員270名中100名が回答,回収率37%。詳細は桐生支部ホームページ参照)の結果では,個人ごとの時間外労働,サービス残業の多寡をより詳細にみることができます。

まず,2007年4月以降回答時点までの1か月平均の時間外労働時間を「10時間未満」から「100時間以上」までの7段階に区分して尋ねたところ,以下のような結果が出ました。

次に,当局調査でも表れてこない,「隠れたサービス残業」ともいうべき(そして,個人情報・機密情報流失などの事態の原因にもなる)「持ち帰り残業」について尋ねたところ,「頻繁にある」11%,「時々ある」19%と,あわせて30%の職員が持ち帰り残業を行っている(行ったことがある)ことが明らかになりました。

さらに,時間外労働手当の支給状況を7段階に分けて尋ねたところ,「2割未満」15%,「2〜3割」14%,「4〜5割」15%,「5〜6割」5%,「6〜7割」7%,「7〜8割」17%,「ほぼ全額」26%という結果になりました。事務職員に限っての数値ではありますが,上記の当局調査に比べてもはるかに低い水準でしか時間外労働手当の支給が行われていないことが明らかにみてとれます。

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■深刻な休日出勤の現状

もう一つ深刻な問題は,休日出勤をめぐる問題です。

上記の組合による調査では,1か月あたりの休日出勤の頻度について,「ほとんどなし」が59%,「1〜2日」が26%,「3日〜4日」が5%,「5日以上」が8%となっています。月の休日の半分前後出勤している職員が十数%というのも問題ですが,さらに深刻なのは,こうした休日出勤に対する手当が適切になされていないという問題です。

上記アンケート調査と別に組合で行った調査(全学の事務職員270名+桐生地区技術職員40名のうち67名が回答)によれば,振替休日に「毎回適切に休めている」職員は35%程度に過ぎず,「休めないことが多い」16%,「ほとんど休めない」7%など,「ただ働き」になっているケースの多さは深刻な問題です。従来,組合からの追及に対して大学当局は,「規則上は当該月内に取れるのだから,問題は現場担当者の対応の不適切さ」だとしてきましたが,今回は,事務局長から「取れないものは取れないというのであれば対応は考えたい」との旨の発言もありました。

その後,組合の中央執行委員会でも検討を重ねた結果,とくに土曜日の休日出勤について,後の週への振替がたとえ規則上可能でも,そのことによって休日出勤のあった週の労働時間が40時間を超える(=時間外割増賃金の支払い義務が発生する)ことを回避するため,書類上は当該週のウィークデーに振替えたことにして,「運が良ければ」以降の週のどこかで休めることもある(けれども大多数の場合はそのまま休めずじまい),というケースが極めて多いことが判明しました。こうした処理は,二重帳簿という意味でも問題ですし,これによって救えるケースが圧倒的少数であるという意味でも問題であり,妥当な解決とはいえません。当局との懇談会や団交を通じて引続き追及していきます。

■管理業務の肥大化は当局も問題視

時間外労働多発の原因である,法人化後の煩瑣な管理業務(とくに中期目標―中期計画による業務管理)については,事務局長,学長とも,軽減の必要性は認識しており,とくに学長は,国大協を通じて簡素化・軽減を訴えていくと明言しました。組合としても,どこが余分で削減すべき業務であるか,積極的に提言していく必要があります。

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《 このほかの諸問題 》

■定年後再雇用にかかわる問題

定年退職者の再雇用にかかわっては,「再雇用希望調査時期に間に合うよう,退職金・年金等退職後の生活にかかわる問題と,再雇用制度についての説明・質疑応答を含めた説明会を設定すること」,「前記の説明会および永年勤続者と学長との懇談会においては,日々雇用職員も招請対象とすること」を要求しました。当局は,「説明会,再雇用については昨年は遅かったので,早めるよう努力する」と答えましたが,日々雇用職員については「雇用形態が違うので,永年勤続者につき学長名での表彰はいかがなものか」という考えが示されました。ただし,部局で独自にやる分にはかまわないことも明言されました。

また,再雇用にあたって,「勤務形態・勤務場所等,最大限本人の希望を尊重すること」も組合は要求しました。とくに勤務時間については,「週32時間でないとなかなか採用されない」との印象が固定してしまうと,職場によっては,「週40時間からの不足分が同僚への負担として転嫁されるため,申し訳なくて再雇用にエントリーできない」という職員が多発することも考えられると,懸念を表明しました。この点についての当局の回答は,「勤務時間と業務量については部局で調整するはずなので,40時間未満でも遠慮せずに希望は出してほしい。40時間希望については,安易にすべて40時間にはできない」というものでした。

さらに組合は,65歳定年化の実現を目指すことを要求しましたが,当局は,「社会的に65歳定年への流れも存在することは認識しているが,運営交付金をもらっている以上,国の動向を見ながら動かざるを得ない」と答えるにとどまりました。

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■賃金にかかわる問題(昇給査定,教員の入試関連業務)

組合は,昇給査定について「導入を見送り,教職員の合意形成をはかること。仮に査定を導入する場合には,当面,D(2号俸),E(昇給なし)の評価を付けないこと」を要求しました。これに対し当局は,DEをつけないという確約はできないが,機械的な運用はしないことを回答しました。

また,学生募集にかかわっての教員の業務についても,組合は2点の要求を出しました。

ひとつは,「入試広報業務に関して適正な対処をすること」です。この数年,高校訪問(出前授業)が激増していますが,多くの例で交通費等が自腹となっているという実態があります。一定の手当が行われている学部においても,部局の予算を割くという不正常な状態です。このような現状について,学務部学生受入課において速やかに対処すべきことを求めたものです。当局からは,「部局を通してもらえれば,保険,交通費等適切に対処されるはずである。高校側との直接取引にならないよう,高校から直接話があった場合も部局を通してほしい」という回答がありました。

もうひとつは,「入試問題作成・採点業務に対して手当を確立すること」です。私立大では問題作成1件あたり10万円ほどを手当として支給しているところも多いことを紹介するとともに,ミスに対する厳しい処罰があり,また問題作成・採点には非常に労力・時間がかかるというように,膨大なリスクを教員に負わせているのだから,きちんと手当をすることが必要であることを主張しました。この点についての当局の回答は,「本来業務であるので,別途の手当は考えていない」というものでした。

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■本学の将来構想にかかわる問題(重粒子線照射施設)

組合は,重粒子線照射施設設置計画の現状(とくに財政面)につき情報を公開し,計画の見直しも含めた検討を行うことを要求しました。同施設については,かねてから採算可能性への疑問,大学財政を圧迫する危険性への危惧などが学内各方面から表明されています。大学当局は現時点での詳細な状況を明示し,設置しても大学財政を圧迫しないというのであれば明確な根拠を示す責任があります。

交渉のなかで学長は,「撤退も含めた検討を行うべき」という組合の要求中の「撤退」という言葉に対して「大学として関係機関に働きかけて設置を進めている最中に,内部にこうした声があると外部に漏れると計画に深刻なダメージを与える」とたいそう「ご立腹」で,懸念される財政上の展望について,自らの努力を切々と語りました。とくに,寄付などの協力が得られる可能性があるところには積極的に足を運んで誠意をもって訴えていることを学長は強調しました。しかし,こうしたことが強調されればされるほど,施設の収支によって深刻な影響を受ける学内構成員に対する説明不足が逆説的に際立つ結果となりました。

しかし,では稼働後のランニングコストがどの程度であり,それを支弁する見通しがどのようになっているのかは明確にされず,県内の癌患者数が何人だのと――当然,そのうちのどの程度が施設完成後に利用してくれるのかはまったく不透明――いう要領を得ない数値が断片的に出てくるのみでした。

種々の裁量経費等の支給にあたっては微にいり細にわたる説明を求める一方でのこの「お手盛り」ぶりは,私たちとしては到底納得のいくものではありません。

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《 合意事項 》

この団体交渉での合意事項を,組合と当局は文書で確認しました。内容は以下の通りです。


    (地域手当)
  1. 大学は,経営協議会の議を経た上で,2008年4月から全事業所で3%を支給する。
  2. (昇給査定)
  3. 教職員評価・査定については,試行の際に明らかになった問題点を慎重に分析する。
  4. (定年退職者・再雇用)
  5. 大学は,再雇用希望者がもれなくエントリーできるよう,業務量,業務内容等にみあった適切な人員配置を柔軟に行うべく,引続き努力を重ねる。
  6. (時間外労働の削減)
  7. 大学は,中期目標にかかわる評価業務などの削減にむけ,国大協などとも連携しつつ努力を続ける。
  8. 大学は,時間外労働にかかわる法令が遵守されるよう,趣旨徹底に引続き努力する。
  9. (休日出勤に関する取扱い)
  10. 大学は,振替休日の運用にかかわる周知の徹底を図るとともに,代休制度についても研究を行い,導入の可能性を検討する。

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《 定期大会のお知らせ 》

日時:2008年6月30日(月)19:00 〜 21:00

場所:昭和キャンパス 医学部大会議室

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★ 労働法のミニ知識 「名ばかり店長/偽装管理職」 ★

1月28日,東京地裁はマクドナルド社に対して,同社のある従業員に755万円を支払うよう命じる判決を下しました。この従業員はマクドナルド社直営店の店長で,同社に残業代等の支払いを求めて裁判を起こし,請求が認められたものです。つまり,不払い残業の事例です。

ただ,不払い残業といっても,裁判で主に争われたのは,この店長が残業をしたのかどうか,あるいは残業を何時間したのか,といったことではありません。「店長なのだから,残業しても残業代を支払わなくていい」というのが,会社側の言い分です。

その根拠に持ち出されるのは労働基準法です。労働基準法41条は「この章,第六章及び第六章の二で定める労働時間,休憩及び休日に関する規定は,次の各号の一に該当する労働者については適用しない」と規定した上で,2号で「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」を挙げています。つまり,管理監督者については,労働基準法上の労働時間規制を適用しないというのです。そして,適用されない規定の中には,時間外労働・休日労働について割増賃金の支払いを使用者に義務づける37条が含まれます。

では,労働基準法は,なぜ管理職には残業代を払わなくていいかのようなことを定めたのでしょうか。そして,41条のいう「監督若しくは管理の地位にある者」って誰のことなのでしょうか。このあたりをはっきりさせないと,企業は労働者に管理職の肩書きを与えれば残業代を払わなくていいことになってしまいます。名ばかりの管理職(企業による管理職の偽装)が横行しては,労働基準法の意味が薄れてしまいます。

結論から言えば,管理監督者であるといえるためには,労働時間の決定など従業員の労務管理をする側の人間であって自分の労働時間(残業するかどうかなど)は自分で決められること,そして十分な管理職手当てが支給されていて残業代が支給されなくても保護に欠けるところがないことが必要です。そのような人ならば,労働基準法による労働時間規制が不要になる,ということなのです。

この点については,1月28日の東京地裁判決などの裁判例も,厚生労働省の通達も,学説も,一致しています。例えば,今年4月1日に出された通達はこういいます。「その範囲については,一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって,労働時間,休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限定されなければならないものである。具体的には,管理監督者の範囲については,資格及び職位の名称にとらわれることなく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目する必要があり,賃金等の待遇面についても留意しつつ,総合的に判断する」(基監発第0401001号)。マクドナルドの扱いは違法と判断されました。さて,群大はどうでしょうか。

なお,管理職については,これとは別に「組合に入れるのか」という問題があります。労働組合法2条は,「使用者の利益を代表する者の参加を許す」組合は労働組合に必要な自主性を欠く,と考えています。「管理職=利益代表者」とはいえません。組合と会社との労使関係で会社側の立場に属する者,その人が入ると組合の自主性を損ない組合が御用組合となってしまうような人が「利益代表者」なのです。ですから,正真正銘の管理職だとしても,多くの人が組合に加入できます。

(斎藤 周)   
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