II-58号 2010.6.18発行

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【目次】大学法人と今年度2回目の団体交渉 手当新設・増額をめぐって平行線《団体交渉報告》大学法人 後向きの回答に終始「手当を増やすには今ある手当を削るしかない」交付金と人員の削減で悪化する職場環境/法人制度の変更,学長選考方式の民主化も必要 ― 「大学法人化問題を考える」シンポジウムで意見続々 ―定期大会開催のお知らせ
初夏の荒牧キャンパス
初夏の荒牧キャンパス

大学法人と今年度2回目の団体交渉

手当新設・増額をめぐって平行線

群馬大学教職員組合は,去る5月25日に大学法人と団体交渉を行いました。組合は,前回の交渉で大学法人が約束した手当新設・増額のための調査・検討の進捗状況を質しましたが,厳しい財政状況を理由に人件費の増額は難しいという姿勢を崩しませんでした。

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《団体交渉報告》

大学法人 後向きの回答に終始

「手当を増やすには今ある手当を削るしかない」


本誌U-57号(5月11日発行)でお知らせしたように,組合は大学法人に対して団体交渉を申入れ,5月25日に今年度2回目の交渉を行いました。組合からは委員長・書記長以下8名が参加し,大学法人側は主に田学長と中島理事(事務局長)が対応しました。以下では,組合の要求と大学法人の対応をお知らせします。

1. 人事院勧告に対する対応

組合は従来から法的根拠のない人事院勧告への準拠と不当な給与削減に反対してきましたが,大学法人は運営費交付金という公金で経営している以上,これに準拠せざるをえないとして平行線をたどっています。今回の団体交渉では,従業員の給与削減によって「節約された」分の資金が実際にどのような事項に使用されたのか公開を求めました。大学法人側の回答は「経営協議会を経て文科省に出す資料は,承認されないうちは正式な文書ではないので,その後でホームページ等で公開できるかどうか検討する」という消極的なものでした。

ただ,まったく公開しないと言っているわけではありませんので,組合としては公開するときにはその内容を外部の人にも分かりやすく解説する概要(アブストラクト)をつけるべきではないかと重ねて申し入れたところ,大学法人側は「検討する」と回答しました。


 手当新設・増額について

組合が前鈴木学長・執行部と合意した,負担の大きい仕事・特別の技能等を要する仕事についての手当等の新設・増額に関しては,前回の団体交渉で「当該職場における調査・実態把握をした上で検討する」という回答を得ていましたので,その後の進捗状況を質しました。特に本学附属病院の全看護師職員の9割以上が夜間看護手当増額を求める署名に応じ,署名も執行部に渡っておりますので,そのこともふまえた上での回答を求めました。

大学法人側の回答は,桐生事業場で調査を行うなどして検討したが,財源の制約から手当の新設や増額は難しい,というものでした。さらに,手当全体を見直していくことでより有効な手当体系に変えることはありうる,とも答えています。つまり,運営費交付金が毎年減っていく中では全体の人件費を抑制せざるをえず,新しく手当を増やすなら今ある手当をどこか削らなければならない,というものです。

これに対して組合側は,金額の問題も大事であるが,それと同じく精神的に自分たちの仕事が大学法人に認められていること求めているという意味合いもあるので,そのことも考慮してほしいということ,診療報酬の改定によって付属病院の収入が増加しているはずで,それが還元されないのは病院で働く職員として納得できないこと,病院間での格差がすでに生じており医療スタッフの流出をくい止めるには待遇改善をするしかないことを主張しました。

法人側の回答は,診療報酬改定については職員の処遇改善のための委員会を作っているとしたものの,いずれについても「検討する」の一点張りでした。看護師職員の9割が署名した夜間看護手当増額の要求についても財務状況が厳しいので困難であるという姿勢を崩しませんでした。

手当の新設・増額と引き替えに他の手当を廃止・削減するというのは,「一部の教職員の労働条件を引き上げるなら,別の教職員の労働条件を引き下げる。それがいやならあきらめろ」ということです。ここには経営者として努力する姿勢はまったく見られません。自らは傷つくことなく教職員間には反目を作り出す,きわめて無責任な態度です。


 入試手当について

入試手当については前回交渉で「他大学の入試手当の内容を精査」するという回答だったことをふまえて,その後の検討結果を質しました。入試業務はミスが許されない,精神的にも実質的にも負担が大きい業務であり,手当を支給する国立大学法人は増えています。

これに対する法人側の回答は,大学によって考え方がまちまちなので,群馬大学としてどういう考えでいくのかを検討させて欲しい,というものでした。さらには,ミスの許されない業務は入試だけに限らないとか,本来業務であって付加業務ではないので手当をつける必要はないという考え方もある,といった後向きの姿勢が目立ち,前執行部と組合が交わした約束を反故にすることも匂わせています。


 教職員の休日労働に関して

休日労働に関して組合は,一部教職員に偏重している過重労働を早急に解消すること,その上で,a) 休日期間内に振替可能な日が無い場合は期間外での週休日の振替を,またそれも不能な場合は休日給の支給をすること,b) 割増賃金・休日給の財源を,部局の予算以外で確保することを求めました。

大学法人側は,a) については原則としてそうなっているので確認するまでもない,b) については部局の予算で不足が生じたら全体から補充することになっている,と回答しました。

2. 労働時間・労働環境(総労働時間の短縮など)

労働時間・労働環境に関して,組合はa) とくに看護師職員の休憩時間・超過勤務の実態を把握すること,b) 休憩時間・週休・年休の完全取得を可能にすること,c) 不払い労働を根絶すること,d) 教職員の精神的労働環境の改善を求めました。

a) に関しては,看護師婦長会を通じて1時間の休みを取るよう指導しており,大分改善されたはずである,b),c) については当然のことなので,そのように努力したい,とくにダウンサイジング等,業務の見直しすることで適切に対処していきたい,d) については,事務職員にパワーハラスメントに関するDVDを見てもらうなど指導に務めており,今後も継続して注意していきたい,とい回答しました。

特に不払い残業に関しては,局長は「ないと認識している」「何か問題があれば人事労務課に申し出てくれれば対処する」と明言しました。

3. 学長選考について

学長選考について,組合は手続きの民主化を要求しました。具体的には,a) 意向調査投票は,各投票者が適任者1名を選ぶ方式を取ること,b) 意向調査投票結果(各候補の票数)の公表をすること,c) 学長選考会議の選考過程(投票で決める場合はその投票結果)を公表すること,d) 学長選考会議は意向調査投票結果を尊重すること,です。

大学法人側の回答は,学長選考については学長選考会議の専権事項なので,執行部といえども口出しできない,というものでした。もっとも,本誌「ぐんだいタウン」でもお伝えしたように,上記のa), b) に関しては改められることになりました。

群馬大学の場合,意向投票の投票権がなぜ助教にはないのか質しましたが,学長選考会議が決めたことなのでわからない,という回答でした。

4. 教職員評価について

教職員評価について,組合は,a) 評価を本人に開示するとともに,苦情処理の仕組みを整え,苦情処理委員会には複数の組合代表を加えること,b) 評価の結果は業務の改善にのみ用いるものとし,昇給の査定には用いないように求めました。

大学法人側の回答は,a) に関しては,すでに評価の本人への開示,苦情処理の仕組み(苦情処理委員会)は整っており,組合代表を委員会に加えるつもりはない,b) に関しては,人事に反映させることが評価を実施する主要目的なのでそのようにしている,職員に関しても昨年度から昇給に反映させている,というものでした。

昇給に反映させる際の適応マニュアルを作成し,ホームページで公開しているということです。

5. 非常勤職員の待遇に関して

非常勤職員の待遇改善に関して,組合は,a) 負傷又は疾病による特別休暇の有給化,b) パート職員への財形貯蓄の適用を求めましたが,大学法人側は,今まで非常勤職員の特別休暇の範囲を広げてきた経緯もあり,これ以上の拡大は考えていない,として組合の要求を拒否しました。

これに対して組合は,非常勤職員はもともと待遇が非常に悪いので改善していって欲しい,という組合側の考え方を示しました。

6. 安全衛生(昭和キャンパスでの医務室の設置)

組合は,昭和キャンパス医務室の設置を求めてきましたが,大学法人側もこれに応じ,事務部の隣に医務室を設置し,そこに常備薬を置きました。ただし,医師を置くだけの人的余裕が無いということです。組合は,医務室について教職員に広報することと,医師を確保するよう引き続き努力することを求めました。

7. 情報公開について

情報公開に関して,組合は,外部資金の間接経費の総額,各事業所別の分配額,及び使途内訳を21年度分についても公開するよう求めました。

大学法人は,21年度の財務諸表の決算で出てくると思うので見て欲しい,科学研究費補助金や受託研究等の間接経費は間接経費は,全学に半分,部局に残り半分行くなどとルールを決めており,それにしたがって配分している,と回答しました。

8. 組合(荒牧キャンパスの組合事務所の拡充)

組合は,法人化による労使関係の変化をふまえ,荒牧キャンパスに本部事務所を移転することを決定しました。これにともない,より広い部屋を荒牧キャンパス内の適切な場所に確保するよう求めましたが,空いている部屋がないとして大学法人はこれを拒否しました。

最後に黒須委員長から学長に対して,働くものの目線をもっと具体的に出して,働く人が意欲をもって働ける場を作っていくというのも管理者の大事な役目なので,この点をもっと考慮していい大学を作っていって欲しい,と要望を述べて交渉は終わりました。

今回大学法人側は,とくに重粒子線の立ち上げにともなって大学の財政状況が厳しくなっていることを強調し,手当の新設・増額が難しいという姿勢を崩しませんでしたが,診療報酬の改定に伴う収入増は職員にも還元されるべきですし,なにより群馬大学の労働者の意欲を高め,魅力ある職場を作っていくことが経営陣に求められる役割といえます。われわれは引き続き,労働環境の改善のための交渉を続けていきます。

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交付金と人員の削減で悪化する職場環境
法人制度の変更,学長選考方式の民主化も必要

― 「大学法人化問題を考える」シンポジウムで意見続々 ―

河島 基弘(教育文化部長/社会情報学部)

群馬大学教職員組合主催の「大学法人化問題を考える」シンポジウムが5月26日の午後6時半から荒牧キャンパス・社会情報学部棟の205教室で行われました。あいにくの雨模様のため出席者は少なめでしたが,報告者,会場の参加者から貴重な意見が数多く寄せられ,予定時間を大幅に上回る9時過ぎまで活発な議論が続きました。シンポジウムでは,運営費交付金と人員の削減で悪化している職場環境を改善すること,非民主的な制度で選ばれた学長・経営陣によるトップダウンの大学運営方式を改めさせることの必要性などが指摘されました。

シンポジウム風景

開会挨拶に立った教育文化部長の河島が「法人化によって人減らしが進む一方で仕事量が増え,各職場は疲弊している。こうした問題点を組合員で共有したい」と趣旨説明をし,シンポジウムが始まりました。続いて斎藤周書記次長が基調報告に立ち,大学法人化とは,財政面では国家の高等教育の責任放棄であり,運営面では大学が国家から自発的服従を強いられることであるとし,大学役員の権限が増大する一方で,評議会・教授会自治が縮小したと指摘しました。その上で組合の果たすべき役割として,①労働条件の維持・改善,②大学運営の民主化―の2点を挙げました。①労働条件の維持・改善では,組合が獲得した成果として,全キャンパスでの地域手当3%獲得,附属学校園教員の賃金引き上げ,非常勤職員の待遇改善,不払い残業の削減などがあるものの,運営費交付金が削減される中で本来準拠すべきでない人事院勧告に応じる形で給与が削られたこと,教職員の多忙化が進んでいることなどの問題点が残っていると述べました。②大学運営の民主化では,学長選考において教職員の意向を反映しない仕組みを作る,トップダウンで重大事項を決めるなど,従来の経営側の姿勢の問題点と,組合が改善を主張し続けてきた学長選考方法が最近改められたという成果を紹介しました。最後に,組合が今後取り組むべき課題として,「知恵を高め,多くの声を代表するために」組合員の数を増やすこと,説得力のある要求を構築して学内世論の支持を得ること,法人制度自体を改めること―の3点を訴えました。

報告する斎藤先生

続いて職場報告に移りました。最初の登壇者である看護師の久家きや子さんは,それまで看護の視点でしか病院を考えていなかった現場が,病院の経済的側面を考えて仕事をするようになったことを法人化のメリットに挙げました。一方で,無駄のない病床利用という目標を達成するために,事務作業などで看護師の残業が大きく増えたことや,同僚の妊娠に対して「お祝いしてあげたいが,欠員が生じるので喜んであげられない」ともらす仲間がいたなどのエピソードを紹介し,「人員が少なく過重労働になると,思いやりのない職場環境になっていくと感じた」と感想を述べました。ただし看護師の職場では,患者7人に対して看護師1人の配置を認める「7対1看護加算」が2007年に導入されたことを受け,翌年に100人の看護師が増員され,超過勤務が減るなど職場に余裕が生まれたなどの明るい話題もあるそうです。久家さんは最後に,看護師にとって「患者に質の高い,よりよい看護を提供するのが仕事の基本」であり,法人化にはデメリットもあるが,メリットを生かしていけたら良いと抱負を語りました。

2番目の職場報告者である狩野源三さんは,事務職員に対して独自に実施したアンケート(回答者16名)を基に職場の実態を報告しました。それによると,法人化による業務量の増減を尋ねたところ,「増えた」と回答した人が10名,「変わらない」が5名に対し,「減った」はなかったそうです。今年4月の実際の超過勤務時間を聞いたところ,「40時間以上」が10名で,中には135時間と答えた人もいたという驚くべき実態も明らかになりました。健康面では「不安はない」と答えたのが4名で,残りの12名は「不安」や「病気」を抱えていることも分かりました。法人化以降に導入された制度に関しては,特に副課長・副事務長の管理職化について「ふさわしい権限も待遇も与えられていない」と答えた人が8名に上り,職員の「名ばかり管理職」化が進行している実態も浮き彫りになりました。法人化時に宣伝された事務組織の専門職能集団化については,「発揮されている」と答えたのは1名だけで,「発揮されていない」の7名を大幅に下回りました。狩野さんはまた,昭和44年から平成15年まで10次にわたって実施された「定員削減」により,教員と看護師以外の職員だけで約400人が減らされたことを指摘し,人員削減と業務量増加は法人化前から進んでおり,「法人化は厳しい状況に追い打ちをかけたというのが正確な表現である」との視点を提示しました。狩野さんによると,法人化の問題点には①自分達で(人繰りを)考えるように追い込まれたこと,②以前より人員管理が見えなくなったこと―などもあるそうです。

3番目の報告者は社会情報学部教授で評議員の落合延高さんです。落合さんも狩野さんと同様,大学の問題は1991年の「大学設置基準の大綱化」以来の20年のスパンで考えるべきであるとの考えを提示した上で,教育研究以外の管理運営や評価作業・研究費申請,高校説明会など入試業務の負担増大で「地方大学では教員も疲労困憊している」と現状に警鐘を鳴らしました。また,運営費交付金の削減によって大学の教育研究が衰退する中,国立大学同士で競争しても全体が地盤沈下するだけであり,法人化問題は大学の問題ではなく「国民的課題」として取り組むべきであると述べました。学長選挙に関しては,投票結果の公表など一定の改善はあったが,現場の声を反映させるために,学長選考会議が意向投票の結果を尊重して選考することが重要であると述べました。教員の研究環境の問題では特に,海外留学制度やサバティカル制度を採り入れることで教員の研究環境を充実させることを提言。教育面では,青少年の国際比較調査を基に,日本の青少年の傾向として,勉強意欲が低く,自分を過小評価しがちである点を指摘し,群馬大学でも問題を抱えた学生が増加していると述べました。最後に,教育に国家財政を投資して成功したフィンランドの例を挙げ,日本でも運営費交付金の減少を止めさせるとともに,学問領域の多様性を確保するなど新しい発想で人材を育成することの必要性を強調しました。

シンポジウムの後半には参加者による討論が行われ,「事務職員の仕事量が多いのは,事務局が各部局に仕事を押し付けるなど構造的な問題が大きい」,「事務職員は私立大学の仕事のやり方を見習って,仕事内容の効率化を進めたらどうか」,「膨大な書類作りは上層部の責任回避のためであり,個人に問題を還元するのでなく,社会に訴えていくことが必要である」などの意見が出されました。

最後に石間経章副委員長が「報告者の話は大変勉強になった。我々の幸せ,家族の幸せ,そして地域が幸せになれる職場を実現したい」と今後の抱負を語り,シンポジウムは閉会しました。

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定期大会開催のお知らせ

群馬大学教職員組合では,下記の通り,定期大会を開催いたします。

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