号外 2008.11.6発行

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群大ノ未来ツクル
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【目次】公開質問状小澤瀞司氏からの回答高田邦昭氏からの回答宝田恭之氏からの回答声明 ― 不透明かつ非民主的な学長選考方法は今回限りに
学長選考意向聴取投票を13日に控え,
小澤・高田・宝田3氏から公開質問状に回答

鈴木守学長の任期が年度末で終了することに伴い,次期学長の選考手続が進められています。11月13日には意向聴取投票が実施され,17日には学長選考会議が次期学長(公式には「学長候補者」)を選考・決定します。

組合では,意向聴取投票に際して教職員のみなさんに判断材料を提供するため次期学長候補(公式には「学長適任者」)である小澤瀞司・高田邦昭・宝田恭之3氏に公開質問状を出し,全員から回答をいただきました。以下で,公開質問状の質問項目と回答を掲載しますので,ご参照ください。掲載順は,氏名の50音順です。



公開質問状

1 学長選考方法

現行の学長選考方法には,①教育研究評議会と経営協議会にしか学長適任候補者推薦権がない,②意向聴取投票は各投票者が不適切と考える候補者(学長適任者)に×をつける方式なので一人の方を選出する方式としてふさわしくない,③意向聴取投票の結果の実質的な部分は公表されない,④学長選考会議が意向聴取投票の結果を尊重するかどうかわからない,⑤学長選考会議・経営協議会・教育研究評議会には学長指名のメンバーが多いので実質的には学長が次期学長を選ぶことになりかねない,⑥群馬大学構成員の意思を反映しているかどうかわからない学長が生まれるので学長がリーダーシップを発揮しにくい,といった問題があります。現行の学長選考方法を維持すべきか変更すべきかについて,お考えをお聞かせください。


2 大学運営の基本姿勢

群馬大学が法人化されて以来,大学運営にトップダウンの色彩が強まり,各部局の意思が軽視されています。私たちは,「教授会・評議会が議論を尽くして意思形成し,大学はその意思を尊重して民主的に運営することで発展できる」と考えますが,この点についてのお考えをお聞かせください。また私たちは,「数多くの教職員が加入する組合と協議し組合の声に耳を傾けてこそ,よりよい大学運営ができる」と考えますが,この点についてのお考えをお聞かせください。


3 運営費交付金3%削減問題

政府は,運営費交付金の毎年の削減幅を3%に変更する方針を決定しました。この方針に対して,いち早く反対を表明した国立大学長もいます。この問題にどのような姿勢で臨むのか,お聞かせください。

また3%削減が強行された場合,教育・研究・医療の質を維持・向上させるために,どのような対応をとるのか,お聞かせください。


4 学長裁量経費

各部局の予算減を食い止めるために学長裁量経費を削減するお考えはありませんか。また,学長裁量経費の配分(使途)については,誰がどのようにして決定することが適切でしょうか。これらの点について,お考えをお聞かせください。


5 残業(仕事量)の削減

昨年,本学は不払い残業の件で労働基準監督署の立入調査を受けました。残業手当をきちんと支払うことは当然すぎるくらい当然のことですが,それに加えて,教職員の心身両面の健康やワーク・ライフ・バランスの観点からは,長時間労働の解消が不可欠です。長時間労働問題の根底には,仕事が増えているのに人が減っていることがあります。この長時間労働の解消という問題にどのように取り組むのか,お聞かせください。


6 昇給査定

教育・研究・医療は,競争によってではなく,協力によってこそ向上します。したがって,勤務評価によって昇給に格差を設けることは,本学の発展にマイナスの影響を与えかねません。この点について,お考えをお聞かせください。


7 女性教員の割合の引き上げ

国立大学協会は,「2010年までに女性教員の割合を20%に引き上げる」という数値目標を定めています。本学における女性教員の割合を引き上げるための方策をお聞かせください。


8 非常勤職員の待遇改善

本学には多数の非常勤職員が働いています。非常勤職員は,賃金水準が低い,雇用期間が限定されていることがある,といった悪条件のもとで,本学の業務を支えています。常勤職員と同様の職務に従事していても,賃金には大きな差があります。私たちは,非常勤職員の労働条件の抜本的な改善や希望者の正規採用の拡大等を進めるべきと考えます。この点について,お考えをお聞かせください。


9 教育研究環境改善策

法人化後の本学では教員の教育研究環境がますます悪化しています。研究費減のために十分な研究ができずポケットマネーの持ち出しも増加する(そうすると可処分所得が減るので実質的に給与が低下す る)とともに,定数削減と非常勤講師削減による仕事量の増大で教育研究の質が低下しかねない現状です。このような中で,教育研究環境が本学より高い水準の大学へと教員の流出も後を絶ちません。こういった事態は,学生の勉学環境の悪化をも意味します。また,新設された太田キャンパスについては,桐生キャンパスにくらべて教育研究環境が貧弱といわざるを得ません。これらの問題にどのように対処されるのか,お聞かせください。


10 重粒子線照射施設

重粒子線照射施設については,運営に多大なコストを要し,大学財政を圧迫することが懸念されています。この問題にどのように対処されるのか,お聞かせください。


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小澤瀞司氏からの回答

1 学長選考方法

学長選考方法は、学長選考会議によって審議・決定されるものであり、学長適任者という現在の立場において、今回の選考方式について発言することは難しいことをご理解ください。

しかし、現行の選考方式の下で、複数の学長適任者が出て、その中から次期学長が選出されるという事例は今回が初めてであり、選考過程において問題点が明らかになれば、その点について学長会議に検討を依頼することがあってもよいと考えます。


2 大学運営の基本姿勢

大学の教育・研究・社会貢献を実践するに当たり、大学の全構成員の意見に耳を傾け、各部局の教授会の決定を尊重し、役員会や各部局間の意見に相違がある場合には教育研究評議会、大学運営会議で審議を尽くし、さらに学外有識者の参加する経営協議会の提言を入れて、大学全体の方針を決定していくつもりです。

また、現在大学には社会から、教育・研究・社会貢献の質を向上させるために不断の努力を継続し、その成果を明確な形で提示することが一段と強く要請されています。国立大学法人化にともない、活動実績を評価する第三者評価システムが整備され、評価結果を次期中期目標・中期計画期間の大学への予算配分に反映させるとする厳格な評価が実施されるようになりました。社会的要請に応え、厳しい評価にも耐えられるよう、学長のリーダーシップの下に、高い目標とそれを実現するための計画を策定し、全構成員が常に切磋琢磨する中でそれらを達成することが重要と考えます。


3 運営費交付金3%削減問題

我が国の高等教育への公財政支出の対GDP比は、平成16年統計で0.5%とOECD各国平均の半分以下であり、1990年代不況に苦しみつつも教育経費を投入し世界トップクラスの経済力を回復した教育大国フィンランドの1/3以下です。しかも、国立大学においては法人化以降毎年1%の運営費交付金減が課され、すでに本学でも20年度の運営費交付金は法人化当初より約5億円削減されて、定員削減、欠員不補充、光熱水量等の削減、間接経費の充当等により、かろうじて教育・研究基盤経費を維持している状態です。この上、運営費交付金が継続的に3%減とされた場合、大学の運営は危機的状況に陥ることは明らかです。これに対しては、本学も国立大学協会とともに徹底的に戦わなければなりません。

そもそも3%減は容認できないものであり、これが強行された場合いかにすべきかということについては、現時点ではお答えできる状況にはありません。


4 学長裁量経費

学長裁量経費は、学長のリーダーシップのもと、柔軟な大学運営を行うために必要な経費であり、若手研究者への研究費支援、特色ある教育・研究プログラムの実施、教育環境の整備など教育・研究の活性化のために有効に活用されていると考えます。

現在までの所、この財源を確保するために基盤経費を切り込むことはなかったと認識していますが、今後運営費交付金減が持続した場合、毎年1%減であっても、学長裁量経費の確保は難しくなります。3%減にでもなれば、ほぼ不可能になります。そのような財政状況の中で、学長裁量経費の扱いをどうするかは、今後学内でしっかり検討する必要があります。

学長裁量経費の配分については、まず各部局から提案をいただき、役員会で配分案を策定し、大学運営会議で各部局長の承認を経て、学長が最終決定をしており、適切に配分されていると考えます。


5 残業 (仕事量) の削減

昨年、労働基準監督署から指摘を受けたことを真摯に受け止め、今後このような指摘を受けることのないよう、業務量・内容を点検し、対策を講じます。特に、管理的ポジションにある教職員に残業削減の意識を徹底させるようにいたします。

また、事務業務・システムの最適化に関しては、情報推進室に情報事務システム運用委員会を設置し、IT化の促進により、事務労働量の軽減を図る取組が開始されています。


6 昇給査定

平成20年度には、教員評価を実施し、その結果を、勤勉手当の成績優秀者及び特別昇給者の選考に反映させることにしました。これは、平成16年度−21年度の第1期中期目標・中期計画に実施を対外的に約束したことであり、これによって、国立大学法人評価委員会による業務評価で計画の達成を評価されました。

当面、評価の高い者へのこのレベルの措置を行いますが、このような評価が教職員の仕事への意欲を減退させて大学の発展を阻害するとは思いませんし、さらに言えば、大学の業務運営状況について社会からの理解を得るためにも必要と考えます。


7 女性教員の割合の引き上げ

本学の女性教員比率は、13.8%(20年10月現在)であり、これは我が国の女性研究者比率12.4%(19年度版男女共同参画白書)より、やや高い程度であり、国立大学協会が平成12年に提示した、「2010年度までに20%に引き上げる(大学院博士課程の女性学生比率なみとする)」に到達していません。

女性教員比率の増加に関して、まず、「教員選考において男女差別はしない」ことを徹底化することは当然ですが、むしろ問題は、女性の場合、研究者としてのキャリア形成にとって最も重要な時期が出産と育児に重なることであると思います。この困難を軽減するために、勤務時間の弾力化、研究費取得のための支援等に取り組みます。


8 非常勤職員の待遇改善

平成19年度より、在職中の非常勤職員を対象とした本学独自の正規職員採用試験制度を導入しました。20年度採用者では、14名中7名が非常勤職員からの採用となっています。この制度は、臨時職員にとっても、大学にとっても有意義な制度であり、今後とも継続したいと思います。


9 教育研究環境改善策

学術研究推進戦略を策定し、その下に、次のような取組を行っていますので、教育研究環境の整備は、従来よりも組織的に行われていると考えます。

① 教育研究施設と設備の整備

「施設設備の整備活用に関する基本計画」を策定し、年次計画に基づき、研究施設と設備を整備する。また、予算額が1,500万円以上のものは、国への概算要求、500万円から1,500万円の設備には学長裁量経費の教育研究環境重点整備費を当て、500万円未満は各部局で整備することとして、整備事項の選定に当たっては共用性を重視することとした。

② 学術情報基盤の整備

20年度より電子ジャーナルタイトル数の増加、Webベースの学術文献データベースWeb of Scienceの導入などにより、研究大学としての学術情報基盤の整備に努めた。

③ 若手研究者に対する研究費支援

学長裁量経費から若手研究助成経費を措置し(平成20年度約2,000万円)、その年度に科学研究費補助金の申請を行ったが採択に至らなかった若手研究者を支援することとした。この支援を受けた研究者の翌年度の科学研究費補助金採択率は40%以上であり、学内の研究の活性化に成果を上げている。

今後も上記の取組を継続するとともに、外部資金の取得により、これらの財源の増額を図ります。

なお、新設の太田キャンパスについては、学長に就任した場合、工学研究科・工学部及び太田市と十分話し合って教育研究環境の整備に努めます。


10 重粒子線照射施設

重粒子線照射施設は、現在建屋がほぼ完成し、今後装置を搬入し、据付・調整、組合せ試験を経て、21年度中に臨床試験を開始し、その後、治療患者数を徐々に増加させて、最終的に年800人の患者さんの治療を行う計画です。年600人の患者さんの治療をすれば、診療収入により運営経費をカバーできる見込みですが、それまでの期間赤字になります。この間の必要経費を得るために、①文部科学省に概算要求を継続的に行う、②重粒子線治療の普及に係る募金事業を実施することを計画し、すでにこれらに着手しています。これらの収入により、各部局の運営経費に極力迷惑がかからないよう最大限の努力をいたします。

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高田邦昭氏からの回答

ご質問の各項目ともに、実現したいものが多いのですが、現実には財務面からの制限もあり、メリハリをつけての実行になると考えます。ご指摘のように、運営費交付金の削減問題、太田キャンパスの充実、重粒子線施設運営の経費負担など、一つ間違うと群馬大学の存続すら脅かされる事態がおこらないとも限りません。親方日の丸的考えは捨て、国立大学法人のひとつである群馬大学として次の中期計画期間を乗り切り、大学を維持発展させる必要があります。現場からの智恵に耳をかたむけながら、俯瞰的視点から思考した上で、情報を皆で共有しながら一丸となってこの難局を乗り切りたいと考えます。


1 学長選考方法

現行の国立大学法人法のもとでは、学長選考会議が学長選考方法を決めることとなっています。なお本学では学長は選考会議の構成員にはなっていません。私見ですが、より分かりやすく透明性がある方が良いと考えます。


2 大学運営の基本姿勢

どの様な組織においても、ボトムアップは組織運営の基本のひとつです。本学でも様々な職種の方々が働く現場を重視する必要があります。現場から出てきた多様な問題、提案、企画などと、地域や国をはじめとする学外の様々な情報を総合し、俯瞰的な立場から判断を下して大学運営にあたるのが執行部の役割です。この際、執行部は現場を下から支えていくという姿勢が必要です。現場からのボトムアップと執行部のリーダーシップが有機的にかみ合った時に、はじめて大学運営はうまくいくと考えます。コミュニケーションを良くして「見える化」をはかり、本学の職員が一丸となって現在の難局にあたらねば大学の継続と発展は望めません。

組合は現場で働く方々の組織ですから、労働条件をはじめとして十分に協議し、その提案に対しては真摯に耳を傾けて合理的な判断をしていくことは当然のことと考えます。


3 運営費交付金3%削減問題

国民の知の集積と、この知をもとにした人材育成や社会貢献は国立大学法人の使命であり責務です。教育・研究基盤の維持・発展のための基盤的経費である運営費交付金の削減は、本学にとってもその運営の根幹に関わる問題です。他の国立大学法人と連携して機会があるごとに、国立大学の果たす役割について国民にアピールしていく必要があります。

3%削減が実行された時には、無駄を省き支出の見直しに努めるとともに、競争的資金をはじめとする外部資金の導入を促進し、大学としての機能の維持を図る必要があります。


4 学長裁量経費

学長裁量経費は機械的なバラマキではなく、各部局がバランス良く発展していくために、現場の声を良く聞いた上で、執行部のリーダーシップの下に配分する必要があります。


5 残業(仕事量)の削減

可能な限り現場を中心に据えた作業の見直しをおこなう必要があります。大学本部と各部局の関係を見直し、学内における余分な管理業務の削減に努めるとともに、人員配置の適正化が急務です。


6 昇給査定

形式的な業務評価に偏せず、真に職務に適する人材の登用をはかることは重要なポイントです。形式的かつ過度の能力評価による昇給昇進査定は、チームとして業務に取り組む必要がある現状からみて負の側面もあります。良い点は誰にでもあるので、そこを伸し活用する方向での人事により、「全員参加で作る群馬大学」という意識を醸成することが必要です。ただし、仕事をしない者と仕事をする者を同等に処遇し続けては国民の納得がえられないことは常に留意すべきです。


7 女性教員の割合の引き上げ

女性教員に対する出産、育児への支援を充実させます。具体的には保育施設への支援や柔軟性のある就業時間制等を通じて、男性教員と対等に教育・研究への参画を可能とする必要があります。


8 非常勤職員の待遇改善

国立大学法人では運営費交付金3%削減がいわれ、今後は様々な困難が予測されます。財務面も勘案しながら、可能な限り対応する必要があります。


9 教育研究環境改善策

「受験生から選ばれ、本学に入って良かったと実感される大学」を目指すためにも、教育研究環境の改善は大学運営の基本であり、最重要課題です。教育学部や社会情報学部の博士課程大学院設置による荒牧キャンパス活性化はぜひとも成功させる必要があります。工学部太田キャンパスは設置直後の学年進行中であり、まずは完成をめざします。今後の展開については、工学部、地元自治体の考えに耳を傾けて効果的な運用をはかる必要があります。


10 重粒子線照射施設

重粒子線照射施設は完成に向けて工事が進行しています。今後は、これをいかに上手くがん治療に活用するかが本学に課せられた責務です。このために、学内関係者が全力を尽くすことはもとより、県や国との連携をさらに強化・推進する必要があります。管理・運営経費面でカギを握る臨床面での効果的活用には、学内では附属病院各科の密接に協力しあった運営体制が不可欠です。学外では、医学部と附属病院は文部科学省の「がんプロフェッショナル養成プラン」、「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」などをもとに、県や近県のがんセンター、近隣の大学病院間の連携体制を構築中です。このような取り組みを通じて、群馬大学が日本の、さらには世界の先進的がん治療の研究と治療における中心的組織となることを目指します。多額の経費を要する事業であり、学内外で情報を共有しつつ全力で取り組む必要があります。

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宝田恭之氏からの回答

1 学長選考方法

現行の学長選挙方法にはご指摘のように問題点があり、違和感を感じている。但し、学長の選考方法が現行のようになったのにはそれなりの理由があったとも思える。今後の学長の役割を十分考慮し、また、選考方式の変更がどのような変化をもたらしたかをよく検討することによって,改善すべきところは改善し、より良い方向性を検討していきたいと考えている。


2 大学運営の基本姿勢

大学は教育と研究のためにある。したがって、大学は優れた学生を育て、優れた研究を行わなければならない。特に、世界第2位の経済大国である我が国には、世界をリードする教育・研究を行い、国際的に活躍できる人材を育成し、潤いのある未来社会の構築に貢献することが求められている。この点に異論のある方はほとんどいないと思われるが、大切なのはそのために運営はどうあるべきかということである。目的を達成するための最適解を見いだし、適切な舵取りをしていく上では、徹底的な情報収集、情報共有化、情報公開を行う必要があると考えている。学内外の情報を総合的に判断して決断することが学長の責務と思う。また、各部局の意向と異なる決断がなされることもあるかもしれないが、その際は、構成員の理解を得るために徹底的な説明をする責任があると考える。また、こうした説明責任は学内だけでなく、学外の国民に対しても行う必要がある。大学も従来の良いところを伸ばし,反省すべきところは改善していく必要があり、そのために必要なことは直ちに実行に移すフットワークが求められている。

組織はそれを真剣に批判するアンチテーゼを持たなければやがて腐敗し,崩壊することは歴史が教えるところである。教育研究が使命である大学にとって,最も重要なことは教育研究現場にある。学部長拝命以来,この現場で何が起こっており、何が必要であるのかをひとときも忘れなかったつもりである。しかし,自分の視点だけでは十分ではないと考える。現場にいる教員,事務職員,技術職員,そして学生の意見をそれぞれの立場からくみ上げる仕組みは非常に重要である.これからも,群馬大学構成員の皆さんの生産的かつ発展的な意見を大いに期待している。


3 運営費交付金3%削減問題

教育は国家百年の大計であることは確かで,教育経費に関しては国ができるだけの配慮を行うべきである。特に高度な専門性を有する国立大学における教育は我が国にとっても世界にとっても今後益々重要となる。但し、わが国の国家財政が危機的状況にあり、これ以上の負債をわれわれの子孫に残すべきでないことも万人の認めるところである。そのような状況の下,国家予算の一部である運営費交付金を適正に確保するためには、交付金削減に対して最大限反対すると同時に、国民に理解を得るため、大学の成果、運営、経費削減策、将来展望などを広く公開する必要がある。法人化前、ともすれば校費や人件費はどこか天から降ってくるような思い違いがなかったとはいえない。血税をいかに工夫して効率的に使わせていただくか、という不断の努力がまず前提としてなければならない。更に、我々も資金を得るために、最大限の努力を行わなければならない。GP獲得、COE形成やJST、NEDOの外部資金など、必要な資金は自助努力で獲得することが重要であり、更にそれらの努力は大学にとっても刺激になり,自らを高度化することにもつながる。今後、私立大学との比較評価などにも対応し、国立大学の存在意義を国民に認めさせるためには、教職員の更なる結集が必要と考える。


4 学長裁量経費

大学運営のところで述べたとおり、今後、徹底した情報収集、情報共有化、情報公開が必要である。その結果として、学長裁量経費をどのように使用するかを決定することになる。常に学内の状況にフレキシブルに対応し、必要なところに必要な経費を配分することが肝要である。教育研究経費の中でも、教育に関する経費は交付金の重要支出項目と考える。研究経費はできるだけ外部資金によって調達することを目指し、教室整備や学生実験設備充実など、教育を重視した経費支出の工夫をすることが必要である。また、全学的に若手教職員の育成は群馬大学の発展に大変重要な課題であり、それらを学長裁量経費で賄う必要があると考える。


5 残業(仕事量)の削減

長時間労働の解消には、教職員の壁を低くして全教職員の協力体制のもと、一層の効率化が求められる。仕事の簡素化のためには、常に業務の改善を図る必要があり、教職員からの改善提案を重要視したい。また、事務は一般職と専門職に分類し、作業の高能率化を達成する。業務の平準化も重要なことと考える。常に現場の情報を把握し、適材適所の人事配置を行う。尚、現在、一般社会でも問題となっているように、激務による問題は過労やそれに伴ううつ病,身体的疾患などである.この点については学生のメンタルヘルスケアと同様に職員にも拡大して今後対応してゆかなければならない重要なことであると考えている。


6 昇給査定

国民の税金が主体である国立大学法人は,人件費についても国民に説明できる使い方をしなければならないと考えるが、個人評価による極端な二極化構造には反対である。但し、勤務評価によるある程度の格差は仕方がないように思える。その評価および昇給査定が構成員の仕事に対する積極的な姿勢を促すようなシステムにする必要がある。また、学内全体の評価としては、個人よりもむしろ、学科単位、専攻単位、部局単位などの組織毎の評価を行う必要があると考える。


7 女性教員の割合の引き上げ

これからは、優れた人材を確保するためには男女や国籍を問わず採用の機会均等の門戸を世界に開くなどの姿勢を持ち続けることが重要であろう.女性だから優遇するのではなく、男性と女性の違いを踏まえた上で、女性が働きやすい制度や環境整備を行いたい。例えば、出産や子育てに関して手厚い制度を構築するも一つの策と考える。


8 非常勤職員の待遇改善

常勤・非常勤雇用の問題はどこの職場においても深刻である。すべての人は,その人の行った労働の価値に相応しい対価を受けるべきである。そのような観点から,常勤、非常勤の処遇を見直していくべきである。また、一般職と専門職との分離を行い、更に研修などへの派遣を促進し、充実した業務を行えるような体制を構築したい。非常勤職員の試験採用による常勤職員への変更についても積極的に推進すべきと考える。


9 教育研究環境改善

科学技術基本計画第3期では一応25兆円の予算が見込まれており、努力次第では外部資金導入の可能性は大きい。法人化によって、資金調達の自由度は増えたと言えるので、この機会を逃さずに積極的に外部資金を導入し研究環境を整備する必要がある。但し、若手教員の研究環境、資金は取りにくいが重要な基礎研究環境および教育環境整備には特別の配慮が必要と考える。組織として外部資金を獲得して研究環境を整備し、間接経費やその他の予算を若手教員や基礎研究資金に向けられるような制度を検討したい。太田キャンパスについては,まだスタートしたばかりであり、環境が十分に整っていない面もあるが、自治体、産業界、地域の支援は絶大であり、今後、着実に改善していけると考える。図書館や食堂,購買など学生や教職員向けサービスも,少しずつではあるが整えてゆくつもりである。


10 重粒子線照射施設

重粒子線照射設備の今後の運営は群馬大学にとって大変重要である。健全運営のためには経営企画が重要であり、附属病院を中心とした組織により集中的に検討し、経営基盤を強固にする。また、運営は全学的な協力体制のもとに行う。更に、この機会に、癌治療の拠点となるよう努力したい。今後、重粒子施設の経費に関する詳細な情報を収集し、的確なアクションプランを策定したい。

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声明
不透明かつ非民主的な学長選考方法は今回限りに
2008年11月4日 群馬大学教職員組合

現在,群馬大学では次期学長の選考が進められていますが,私たち群馬大学教職員組合は,不透明かつ非民主的な現行の学長選考方法を,とうてい容認することができません。

教育・研究・医療という大学の任務は,どれも教職員の自発性と連帯の力によってこそ十分に果たすことができるものであり,トップダウン方式は大学が力を発揮する上で妨げとなります。このような観点からすれば,学長は教職員の意思によって決定されるべきであり,現行の学長選考方法は大学の最高責任者である学長を選ぶ方法としてきわめて不適切です。また,他の国立大学とくらべてみても,本学の方式は異常というほかありません。

このような学長選考方法は今回限りとし,一刻も早く改めるべきです。以下で,何が問題で,どのように改めるべきかを述べることとします。


1 学長適任候補者の推薦について−教職員一般に推薦権を広げる必要があります。

現行の学長選考規程では,学長適任候補者を推薦できるのは教育研究評議会(以下「評議会」)と経営協議会に限られています。いずれも現職学長の運営組織内部からの推薦であって,これでは広く学内外に学長適任候補者を求める点で不適切です。経営協議会のメンバーはすべて学長指名であり,評議会にも学長指名のメンバーが少なくありません。候補者推薦にあたっての学長の実質的な発言権は,たいへん大きなものとなっています。私たちは,現に他の多くの国立大学が実施しているように,教職員一般が広く推薦資格者となれるように規程を見直すべきだと考えます。

なお,評議会と経営協議会は,現行学長選考規程に基づく3名以内の学長適任候補者の推薦にあたってどちらも過半数の賛成を要件としていますが,これは学長適任候補者をさらに限定する権限を両機関に与えることで教職員一般の発言権をいっそう軽くするものです。また,両機関において特定の候補者を支持する構成員が他の候補者を排除する目的で反対票を投じることも可能であり,一部の人たちの考えで結果を左右しかねない非民主的なしくみです。


2 意向聴取投票について

(1) 「×」をつける投票方式を改める必要があります。

現行の意向聴取投票では,投票者は支持する候補者(公式には「学長適任者」)の氏名を投票用紙に書くのではなく,候補者中の不適任と考える人の欄に「×」をつけることになっています。

学長が強いリーダーシップを発揮するためには,多くの教職員から学長への支持・信頼が寄せられる必要があります。ところが,現行の「適任ではない者」に「×」をつける投票方式は,その点できわめて不適切です。最高裁判所裁判官の国民審査のように「すでにその地位にある人たちの中から不適格な人たちを排除する」のであればともかく,これから学長職につくひとりの人を選ぶしくみとしてはふさわしくありません。また,自分が支持する候補以外の全員に「×」をつける投票者が多くなることも予想されます。投票者が適任と考える候補者に1票を投じるしくみへと改めるべきです。現にほとんどの国立大学では,そのような投票方法をとっています。

(2) 投票資格者の範囲を拡大する必要があります。

現在,投票資格者の範囲は,講師以上の教員と一部の幹部職員に限定されています。多くの教職員からの学長への支持・信頼が学長の強いリーダーシップの基盤となることからすれば,これを抜本的に拡大する必要があります。他の国立大学法人のなかには,助手,一般職職員,附属学校園教員も含め,すべての常勤職員を投票資格者とする例もかなり見られ,本学もこれらの先例に学ぶべきです。


3 透明性の確保について

(1) 投票結果を正しく公表し,教職員の意向が集約できるしくみに改める必要があります。

現行の方式では,意向聴取投票の結果はほとんど公表されません。すなわち,氏名・得票はいっさい公表せず,×票が過半数を超えた候補者が何人かということだけを発表することになっています。これでは,投票結果の公表とはとても言えません。教職員の「意向」を学長選考会議は知ることができますが,当の教職員は自分たちの投票の結果を知ることができないのです。結果公表についてのこの消極的姿勢もまた,異例の部類に属します。他の国立大学が実施しているように,氏名・得票を公表し,あわせて一次投票・二次投票(さらには三次投票)の制度を設けて,教職員への意向聴取が学長選考にあたって有効に,かつ目に見えるかたちで集約できるように,意向聴取投票のしくみ全体を見直すべきです。

(2) 「学長選考会議は投票結果を尊重しなければならない」ことを明記する必要があります。

現行の学長選考方法においては,意向聴取投票の結果は公表されないばかりか,学長選考会議が次期学長を選考するにあたっては投票結果を「参考」にすれば足りることになっています。「×」票がいくら多くても(過半数だったとしても),学長候補から除外されることはありません。また,学長選考会議の判断次第で,意向聴取投票の対象となる「学長適任者」の中で「×」が最多だった人が学長に選ばれることもあり得るのです。いったい何のための投票なのでしょうか。しかも,学長選考会議の構成員は学長指名の委員が過半数を占めるので,ここでも学長の意向が結果を左右する可能性があります。学長選考会議が教職員の意向を聴取するからには,「学長選考会議は投票結果を尊重しなければならない」というルールを定めるべきです。


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