II-40号 2006.6.14発行
【目次】「給与問題と労働法に関する教職員討論集会」を開きました「学長選考規程および大学の民主的運営に関する学習会」を開きました工学部夜間主コースの学生全国大学職員フォーラムに参加しました定期大会開催のお知らせ4コマまんが

「給与問題と労働法に関する教職員討論集会」を開きました

昨年来、教職員組合は学長・役員らと団体交渉を繰り返し、かつてない不利益変更を伴う「給与構造見直し」をくい止めようと努力してまいりました。しかし、このような状況の中、大学側は本年4月より多くの教職員の反対の声を押し切って「給与構造見直し」を強行いたしました。法人化後の賃金は、教職員と大学側との交渉によって決まるものです。この状況を跳ね返すためには教職員が今回の「強行」の問題点を正確に把握し、力を結集することが不可欠と考えます。

そこで、この問題についての教職員討論集会を教育文化部で企画し、4月28日の夜に開催しました。今回の集会は、この間の大学側との交渉をふり返り、私たちの依拠する労働法の観点から、そして大学の財政状況に切り込む中から、今後の交渉と運動の課題について話し合うために開いたものです。

以下、当日行われた3名の講師のお話の概略を報告します。

伊藤報告「給与構造見直し問題に関する団体交渉の経過と課題」

報告者の伊藤賢一氏(社会情報学部教員・社会学、中央執行委員会書記長)から、まず2005年度に出た人事院勧告の内容について説明があり、これを群馬大学に適用することの問題点を述べられました。この人事院勧告は、(1)給与の平均4.8%の引き下げ(中高年で7%)、(2)給与カーブのフラット化、(3)号俸を現行の4倍に細分化し勤務実態(能力・実績)を反映させること、(4)地域手当の新設(前橋3%、桐生0%)、(5)広域移動手当ての新設(60km以上の移動が対象。高級官僚に手厚いと非難されている)などが骨子となっています。

このような人事院勧告に対し、a)法人化により非公務員になったはずの教職員になぜ人事院勧告が適用されねばならないのか、b)法人化して大学側の裁量が増したはずなのに、なぜ人事院勧告の準拠にこだわるのか、c)運営交付金の効率化係数(毎年1%の減額)を考慮しても平均4.8%の給与減額は不当であること、d)従来より国立大学の中で最低ランクに位置する群馬大学教職員の給与をさらに下げることの理由が説明できない、など、この勧告を群馬大学に適用するには多くの大きな問題点があることが指摘されました。

その後、この問題に対し昨年の8月8日に始まり本年の3月29日までの6回に及ぶ団体交渉の内容と結果についての説明が時系列的になされました。また、この間の昨年11月に行われた人事院勧告適用反対署名(708筆)、今年2月の桐生地区での「キャンパス間給与格差に反対する署名」(225筆。工学部長を含む3分の2以上)についての説明があり、これらの反対署名に対し、学長は「重く受け止める」として回答を約束しながら、いまだなされていない、との指摘がありました。さらに、本年2月に桐生、荒牧、昭和の順に行われた大学当局の「給与構造見直し説明会」においては、事前の団体交渉において「賃金の引き下げ幅、生涯賃金のマイナス額」などを具体的な資料として提出するように要求したにもかかわらず、それらの資料が示されないばかりか、人事院勧告に従った場合でもあたかも少しずつ増えるかのような印象を与える、その場しのぎの不誠実な説明がなされたとの指摘がされました。

斎藤報告「労働法からみた給与水準引き下げ問題」

斎藤周氏(教育学部教員・労働法)は、専門とする労働法の立場から、(1)給与をはじめとする労働条件は、労使の合意(労働契約)で決まること、(2)就業規則の一方的不利益変更は例外的にしか認めれらないこと、(3)使用者は「誠実に」団体交渉に応じなければならないこと、の大きな3原則を日本国憲法、労働基準法、労働組合法、独立行政法人通則法等を引き、過去の判例なども参照しながら、わかりやすく説明されました。

(1)については、国立大学法人の教職員は(非公務員型であるので)、労働条件は労働基準法等が、集団的労使関係については労働組合法が適用され、国家公務員法・人事院規則は適用されないことを明確に示され、このことに関して大学側の「そうは言っても...」という誤った「常識論」に押されてはならないことを強調されました。また、通則法や閣議決定も、人事院勧告準拠の理由とはなり得ないことを説明しました。

(2)に関し裁判例は、内容が合理的で変更が真に必要な場合には一方的不利益変更を容認することもあるが、賃金引下げについては高度の必要性を求めていることを示されました。そしてこの観点から見ても、今回の就業規則改定(給与水準引き下げ)には高度の必要性が認められないこと、群馬大学が現在財政の危機に瀕していないことから、大学側が明瞭に引き下げ理由の説明ができないことを指摘しました。

(3)に関しては、大学側が団体交渉を拒否することは構成員の団結(組合の存在)を否認することであり、組合の存在も団体交渉も、労働条件対等決定のために必要不可欠のものであることが強調されました。また、団体交渉はそのテーブルについただけでは使用者側が交渉に応じたことにはならず、組合の主張に耳を傾けず使用者側の主張を述べるだけでは交渉とはいえないこと、使用者側には合意・譲歩(の義務はないが)に向けて努力する義務はあることを明確に述べられ、その観点から見て現時点での群馬大学当局の対応は組合の要求にきちんと回答しているとは言えない、という結論でした。

最後に、今後の人事院勧告がさらに悪くなる可能性があるが、そのような状況下で不当な不利益変更を強行させないためにも、法人の財務状況の組合側からの把握が必須事項であること、そのためには法人側がどのような資料を提示すべきなのかを組合側がしっかり言えることが大切であることを強調されました。

山田報告「国立大学法人の財務状況と給与問題」

山田博文氏(教育学部教員、経済学)は専門の経済学の立場より、(1)大学の独立法人化とは何だったのか、(2)経済財政諮問会議の戦略展開のなかの大学、(3)群馬大・埼玉大・信州大の財務比較で何が見えるか、の3点について論じ、給与問題の背景、現在の財務状況の問題点などを明らかにされました。

(1)に関連して、給与の減額、学費の値上げによって大学人と保護者・国民負担の増大を招いていること、研究費の減額によって、研究の自由の侵害が行われ、基礎研究の退化が始まっていること、特定分野へのヒト・モノ・カネの集中によって、日本がゆとりと豊かさなき不安定な「経済大国」に陥っていること等を指摘されました。

(2)に関しては、政府の失政による天文学的な財政赤字の原因と責任が明確にされないままの「財政再建戦略」が展開され、一方では、法人税減額、金持ち減税、他方では、消費税増税、教育・社会保障・福祉関係予算の削減が著しいことを指摘されました。また各国の資金配分や学校教育費のGDP比率を比較し、「軍事大国のアメリカ型」、「福祉大国のヨーロッパ型」、「企業大国の日本型」と分類できるが、3番目の型を取る日本では、社会システムとしても、目先の利益追求を目指す企業の研究設備負担を大学に肩代わりさせる傾向が顕著であり、国全体として、独立した人格を持つ市民の育成を軽視し、企業人教育に重点を置いていることが指摘されました。

(3)に関しては、群馬大・埼玉大・信州大の財務状況の具体的数値(【表】参照)を示しながら、他大学に比して群馬大学の教育経費・研究経費・教員人件費が大幅に低いことが指摘され、財務内容の問題点を浮き彫りにされました。

A表・経常収益の構成と割合埼玉大群馬大信州大
1. 運営費交付金
2. 学生納付金
3. 付属病院収益
4. 受託研究・事業収益
5. 寄付金収益
6. 資産見返負債戻入
7. その他
65億円 53%
50億円 41%

2億円 2%
4億円 3%
2億円 2%
1億円 1%
129億円 37%
39億円 11%
154億円 44%
7億円 2%
7億円 2%
10億円 3%
2億円 1%
164億円 41%
78億円 17%
140億円 35%
7億円 2%
7億円 2%
11億円 3%
2億円 1%
8. 経常収益 計123億円 100%348億円 100%398億円 100%
B表・経常費用の構成と割合埼玉大群馬大信州大
9. 教育経費
 (学生1人あたりの金額)
10. 研究経費
11. 教育・研究経費 小計
12. 診療経費
13. その他
14. 役員人件費
15. 教員人件費
16. 職員人件費
17. 人件費 小計
18. 一般管理費
19. 財務費用・利子支払い
11億円 9%
12.6万円/人
8億円 7%
19億円 16%

5億円 4%
1億円 0.8%
67億円 55%
25億円 20%
93億円 76%
5億円 4%
0億円 0%
9.4億円 2.8%
13.4万円/人
11億円 3.3%
20.4億円 6.1%
111億円 33%
12億円 3.5%
1億円 0.3%
92億円 27.5%
84億円 25%
177億円 53%
6億円 2%
9億円 2.7%
16億円 4%
13.8万円/人
16億円 4%
32億円 8%
102億円 26%
10億円 3%
1.4億円 0.4%
122億円 31%
91億円 23%
214億円 55%
10億円 3%
10億円 3%
20. 経常費用 計122億円 100%335億円 100%379億円 100%
8−20. 当期利益1億円13億円19億円
学生数8433人7042人11691人
出所)各大学の「損益計算書」(平成16年4月1日〜平成17年3月31日)より作成。
注:数値は、千万円で四捨五入のため、原票とは若干乖離している。
Point! 1. どの分野にどれだけの資金が配分されているのか−それが問題
−大学の姿・方向性を映す鏡 B表
2. 3大学の比較で注目されるのは、番号では9.10.14.15.16の費目が、費用全体に占める%の高低

以上の3報告を受け、活発な討論が行われました。今回の集会は、参加者にとって「給与構造見直し」の問題点を学習・再確認する良い機会となりました。また組合にとっても、今後も取り組んでいかねばならないこの重要問題に対し、多くのヒントと課題が与えられた有意義な集会でした。

(文責・松浦勉)
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「学長選考規程および大学の民主的運営に関する学習会」を開きました

5月25日夜、教育文化部主催で「学長選考規程および大学の民主的運営に関する学習会」が開かれ、中央執行委員会役員と支部役員を中心に13人が参加しました。堀内雅子さん(教育学部教員、評議員)、今村元義さん(社会情報学部教員、評議員)、青木武生さん(医学部教員)の報告をもとに、今秋行われる学長選考から適用される新しい選考方式(学長選考規程)の内容と問題点および大学運営の在り方について、突っ込んだ話し合いが行われました。

●学長選挙がなくなった? 群馬大学学長選考規程に疑義あり

群馬大学が法人化して2年余り、この間、組合は就業規則、賃金問題を中心に活発に活動してきましたが、今後のもう一つの課題として、トップダウンが目立つ法人運営に対して、民主的な大学運営を求めてゆく課題があります。なかでも学長選考制度は、民主的な学内運営の要となる最重要問題の一つです。ところが昨年秋、学内的な議論もなく、またほとんどの教職員が気づかぬままに、新しい学長選考規程が定められ、今年の秋には、新規程の下、法人化後初めての学長選考が行われます。新しい規程において一体どれほどの改変があったのか、そしてどのような問題点があるのか、組合員も含めて、教職員にはまったくと言ってよいほど知られていないのが実情です。今回の学習会は、まずは組合員のなかで新規程の中身について学習し、問題点を洗い出すことを目的として開催されました。

●選考規程は評議会で一度も審議されなかった

堀内報告から明らかになったのは、これほどの重要問題が教育研究評議会(以下、評議会)で一度も審議されなかったという事実です。従来、大学の学長は教育公務員特例法の考え方に基づいて、全教員の直接投票によって選出されることが当然とされ、群馬大学でもずっと投票によって選出してきました。ですから法人化後、学長選考会議が設置されることになったとはいえ、選考会議による選考が従来の投票方式とどのように組み合わされるかが、最大の関心でした。青木報告が示したように、実際、多くの他大学では従来型の学長選挙を実施しています。ところが昨年11月29日、本学の学長選考会議はたった4回の会議で、一度も教職員の意向をはかることもなく、評議会の議題とすることさえもなく、従来の選挙とはまったく異なる新しい選考規程を決定したのです。そして新規程は直ちに12月1日施行とされ、施行後、12月の教授会、評議会で「報告」されたというわけです。

評議会での質問に対して、事務局は教職員の意向を聴取したと答弁したとのことですが、それがいつのことなのか、学習会参加者が誰一人知らなかったことは言うまでもありません。これほど重大な問題が、ほとんど誰の意見も聞くことなく、学長選考会議の8人だけで決定されるようなことがあってよいのでしょうか。何よりもまず、密室での決定とも言うべきこの規程制定過程の不透明さが追及されるべきです。

●投票は他大学に類を見ない×票方式、助手層は除外

新規程の中身を知ると、なぜ一度も公の議論に付されなかったのか、理由が想像できます。今回の規程で助手の投票権が奪われたことは大問題ですが、加えて、そもそも投票自体の意味がまったく変わってしまったことに注意しなければなりません。学長選挙ではなく、学長選考会議による「意向聴取」のための投票だというのです。

「意向聴取投票」というこの制度は、学長選考会議の資格審査で適任とされたものが複数の場合に行われるものとされ(適任者が一人なら投票は行わない)、複数の適任者があって投票が行われる場合にも、なんと投票は「適任ではない」ものに×を付ける方式で、最適と思う候補者に投票する従来の選挙とはまったく異質のものです。他大学の学長選考規程の多くは従来どおりの選挙を定めており、群大の×投票の規程はきわめて異例のものと思われます。また助手層が除外される一方、新たに管理的な職員のみに投票資格が与えられることになり、教職員の意向を広く聴取しようとするものとはとうてい思えません。しかも、わざわざ×投票と規定しながら、×票が過半数を超えた候補者は学長に選出できないという規定さえありません。

●票数も氏名も公表されない! 驚くべき意向投票の仕組み

それどころか、驚くべきことに、各候補者の票数さえも公表されない仕組みとなっています。意向聴取投票の結果として公表されるのは、「学長適任者のうち、学長候補者として適任でないとして有効投票数の過半数を超えた者 ○人」という人数のみなのです。学長選考会議は選考に当たって「意向聴取の結果を参考にする」ことになっていますが、各候補者の票数さえ公表しないで、どうして「結果を参考にする」と公言できるのでしょう。他の多くの大学で設けている二次投票の規定もないことを考えると、意向投票の結果がどのように学長選考に反映するのか、まったく不明と言わざるをえません。

「意向投票」という言葉で、私たちは従来の学長選挙がある程度引き継がれることをイメージしますが、実際に学習会で検討してわかったことは、教職員の側からすれば、まったく意味不明の「奇っ怪な」制度だということです。何のための投票なのか、愕然とするばかりです。もしこの制度で学長選考が行われた場合、選考過程はきわめて不透明なものとならざるをえません。選考会議はあたかも密室と化し、教職員の意向とは無関係に恣意的な選考が行われても、教職員はその経過について何一つ知る手だてがありません。仮に教職員の過半数が×票を投じた候補者がいたとしても、「過半数を超えた者 1人」と公表されるだけで、その氏名はわかりません。そして、その候補者が選考会議で学長候補に決定されることもありうるのです。

●不透明な選考過程、各大学で噴出する学長選考問題

学長選考会議による学長選考は、すでにいくつかの大学で混乱を引き起こしています。青木報告では、訴訟の事態も含めて各地で起こっている学長選考の混乱について報告されました。いずれの場合も、教職員の投票結果が尊重されず、1位ではなく、投票で2位となった候補者が最終的に学長選考会議で学長候補者に推薦されたケースで、新潟大学や岡山大学では大学側を被告とする訴訟にまで進んでいます。投票に示された教職員の意向を顧みない学長選考会議による選考過程の不明朗さが、そこでは問題になっています。ところが、あろうことか、群大の規程の場合には、そうした不明朗さを指摘することさえ困難なほどに、選考過程が闇に包まれる制度となっているのです。

群大の学長選考会議の構成は経営協議会から4人、評議会から4人、理事から2人となっています。経営協議会委員と理事は学長指名ですから、誰が選考委員になろうと少なくとも10人中6人は学長に指名された委員です。評議会選出の4委員は現在、4学部長となっていますが、この中から学長候補者が出ると、その委員は当然、学長選考委員を外れます。補充規程はありませんから、学長選考会議は学長指名の委員がほとんど、ということもありえます。もし現学長が候補者となった場合、上記のような意向聴取しか行われないとすれば、学長選考会議による選考がどのようにして公正さを確保できるのか、はなはだ疑問といわざるをえません。

●現場不在、実質審議不在の大学運営

学長選考規程の制定過程といい、その中身といい、現場の教職員の声を聞こうとする姿勢が今の役員会にはあまりに欠落しています。その傾向は、この2年間の大学運営全般においてもますます顕著になりつつあります。今村報告では、大学運営の両輪の一つであるはずの評議会でさえ、ほとんど実質審議を欠く状況にあることが報告されました。その傾向は、昨年4月に大学運営会議が設置されて以降はなはだしくなり、国立大学法人法で評議会の審議事項と明記されている「教員の人事に関する事項」でさえ、大学運営会議の審議によるものとされ、評議会では報告されるだけだというのです。

大学運営会議に出席するのは学長、理事、事務局長、部局長ですから、学部長一人の部局の立場はきわめて弱く、役員会は評議会の議論を配慮することもなく、思いのままにその意向を通すことができます。結局、大学をめぐるすべての重要事項が、教職員にひと言の相談もなく、学長・理事の周辺で一方的に決まってゆくことになるのです。


大学教育・学生支援機構設立の際の混乱状況にも見られるように、大学の教育・研究現場と乖離したこうした運営がかえって現場に混乱をもたらし、教育・研究の活力を阻害する結果になりかねないことは、すでに多くの教職員が実感し始めているところと言えます。学長選考規程の問題と併せて、大学の民主的運営のために組合の果たすべき役割と課題が、あらためて大きくクローズアップされた学習会となりました。

(文責・豊泉周治)
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リレー・エッセイ「こんな仕事、あんな仕事」その3

工学部夜間主コースの学生 工藤貴子(工学部共通講座)

来年度の大学院工学研究科の部局化および工学部の改組・再編に伴って、工学部夜間主コースは従来の5学科100名から1学科30名に縮小されることになった。しかも、新学科の本拠地は太田となる。この夜間主コース発足時の平成二年から教養教育担当として群馬大学での仕事を始めた者としては、“寂しい”は言い過ぎにしても、思い出多い学科との別れといった感がある。

初めの頃の学生には、こちらが講義に慣れないせいもあって随分迷惑をかけたように思う。しかし、当時の学生達の勉学意欲は今の学生よりはかなり高かったし、こちらも学生との年齢差が今よりは小さかったことによる親近感などにも助けられて、何とか切り抜けてこられたのかもしれない。

最初、講義に使う教科書について当時の教養の先生方に相談したのだが、基本的には使いたい本で良いとのことだったので、今考えるとかなりレベルの高い教科書を使うことになった。その頃は昼間の学生と差をつけたくなかったことも、その理由の一つである。私の専門は化学で、化学の基礎としてはやはり物理化学の内容になり、数式もかなりの頻度で出てくる。学生達の中には、授業中突然手を挙げて、「これは教養の科目なのに、こんなに専門的な内容を講義するのは変だと思います。」と発言する者(化学の専門が何かまだ理解していなかったとは思うが)、また、期末試験の答案の裏に、「自分は化学が好きで得意科目だったけれど、こんなに数学を使う物理みたいなものは好きになれないし化学とは言えないと思う。」といった趣旨のことを書いてくる者がいたりして、学生からの反発をもろに受けた。今の学生よりは随分パワーがあったのだろう。私はその度にうろたえながらも、やろうとしていることの意味を分かってもらいたくて、学生のたまり場になっているアパートまで押し掛けて行ったこともあった。

その後、入試の結果を見て、夜間主学生と昼間学生との少なくとも入学時における学力差を目の当たりにしてショックを受けることになったのだが、正直なところ今でも両者の元々の能力差は無いと思っている。自分の研究室に配属された4年生や大学院生を見ていてその思いを新たにすることもよくある。昼間学生との違いを強いて挙げるとすれば、夜間主コースには要領の悪い学生が多いということくらいである。この要領というのは、自分ではあまり勉強しないが、友人関係をうまく利用して単位を取るといったことで、もちろん全ての場合にこんなことが可能であるわけはないのだが、夜間主学生を見ていると、もっとうまくやれば良いのに、と歯がゆくなることもある。

夜間主コースのもう1つの特徴は、クラスサイズが少ないため、クラスのまとまりが良いということである。ほんの一人でもリーダー格で勉学意欲の高い学生がいれば、クラスの雰囲気はとても良く講義もしやすくなるが、逆もまた真なりである。今は講義中は静かだが、数年前非常に騒がしかった時があって、マイクの設備も無く、「声が小さいのは教官として致命的だ。」などと授業評価に書かれて、腹立たしくまたかなり落ち込んだこともあった。

学生の気質は変わり、最初の頃のように個性的な学生は少なくなったが、なぜか夜間主の特に女子学生とは、同性のよしみで高学年になっても親しく付き合うようになることもしばしばである。たまに飲み会に誘ってもらって恋愛相談を受けたり、現代若者言葉などを教わるのはなかなか楽しい。彼らのうちの今年三月に卒業した一人が「夜間主コースで良かった。良い友達と楽しく学生生活を送ることができた。」と言っていたことが印象的だ。昼間学生と比較されてコンプレックスを感じたりいやな思いをしていることも予想されるだけに、なおさら救われた気がする。

群馬大学工学部夜間主コース卒業生達が、出身校を誇りとして今後も活躍されていくことを祈りたい。

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全国大学職員フォーラムに参加しました

5月27日(土)から28日(日)にかけて、全大教(全国大学高専教職員組合)と日本私大教連(日本私立大学教職員組合連合)の共催による「第1回全国大学職員フォーラム」が、名古屋市の名城大学で開催されました。国公立と私立の大学の組合が初めて共同で開催することと、事務職員を中心としていることが注目され、参加者は106名に達し、たいへん活気にあふれたフォーラムとなりました。ここではその様子をご報告します。

●記念講演「大学職員の現在・過去・未来 ―今後の職員の在り方について考える―」

広島大学高等教育研究開発センターの大場淳先生(高等教育職員開発論)から、大学職員の在り方に関する講演がありました。戦前の帝国大学時代の事務組織の話に始まり、戦後の大学運営においては教学が重視され、経営の視点はそれほど強くなかったこと、諸外国では職員の在り方が日本と大きく異なることなど、大学職員をめぐるいろいろな事情を知ることができました。

その上で、今後の高等教育には質的保証が求められており、大学職員の役割は今後大きく変わることになる、という結論でしたが、特に印象的だったのは、大学職員を英語で表記するとどうなるか、ということでした。欧米では "administrator" や "manager"という言葉が使われている一方、日本の大学職員は、現状に照らし合わせると "non-academic staff" 程度でしかないと指摘され、考えさせられました。

●分科会

記念講演の後、5つの分科会に分かれてセッションが行われました。業務・仕事交流セッションとして「教務・学生関係」「就職・キャリアサポート関係」「財務関係」の3つの分科会と、課題別セッションとして「『給与構造の見直し』と『能力』主義賃金制度」「職員のあり方と大学運営のへの参加・関与」の2つの分科会が設けられました。私は初日に大学運営への参加・関与、2日目に財務関係のセッションに参加しました。

《職員のあり方と大学運営への参加・関与》

名古屋大学と工学院大学から報告がありました。名古屋大学からは、事務職員が今まで従属的な立場で業務を遂行してきたこと、そして今後は事務職員が大学の経営に参画し、そのために必要な専門的能力を高めて、教員との連携のもとに管理運営組織を構築していくことの必要性が提起されました。一方、工学院大学からは、国立との組織の違いをはじめ、新卒者の採用が抑制され、退職者の補充はもっぱら嘱託職員であること、ときどき民間企業から中途採用して年齢構成のバランスをとっていることなどが報告されました。

職員としての能力を高めようとする一方で人数が減らされていくという現状を目の当たりにして、個人的には、専門的能力を高めるのは必要だけれど、人数が増えないと、末端の業務はみんな外注化されて、職場の意思統一が難しくなるのではないか、という疑問を持ちました。

《財務関係》

全大教本部、東京経済大学、立命館大学、日本福祉大学から報告がありました。財源の確保のしかた、会計システムの構築、財務分析の手法など多岐にわたり、私自身、情報処理と経理の業務を主に担当してきましたので、興味深く議論に加わらせていただきました。私大では、年度内で使い切る予算(補助金など)がそれほど多くないので、年度末に大量に物品を発注するといったことがなく、決算業務に専念できるという話を聞き、少しうらやましく思いましたが、代わりに寄附金を獲得するために専門の係を置いて営業をしなければならないとのことでした。私大の方からは、国立は予算がいっぱいあってうらやましいけれど、監査が厳しいので大変そうだというコメントが聞かれました。財源の確保に関しては、それぞれの立場で苦労されているんだなぁという印象を受けました。

●おわりに

2日間を通して、たいへん充実した時間を過ごすことができました。特に、私大職員の方々との情報交換は得るものが多かったです。このフォーラムは今後も2年ないし3年おきに継続して開催していくとのことですので、今後の発展が楽しみです。


申し遅れましたが、私は法人化と同時に組合に加入した事務職員です。ともすれば「事務の連中が…」と批判され、つらいことも多い立場ではありますが、一職員として、大学の持続可能な発展のために努力していきたいと思います。

(T)
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定期大会開催のお知らせ

群馬大学教職員組合では、下記の通り、定期大会を開催します。



* 定期大会では、この1年の活動を振り返り、今後の活動について話し合います。

* 定期大会には、各支部から代議員が参加します。

* 組合員のみなさんには、あらかじめ議案書をお渡しします。









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