Ⅱ-62号 2012.6.28発行 | |
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Ⅰ. 給与・手当に関して
(1)人事院勧告・臨時特例による給与削減について
(2)事務・技術職員の賃金水準実態の改善について
(3)夜間看護手当・負担の大きい職員の調整額・資格を保持する職員の手当について
(4)入試手当について
Ⅱ. 教員の労働条件改善に関して
(1)若手教員向けの国際学会参加のための学内ファンドについて
(2)教員の任期制について
Ⅲ. 技術職員の労働条件改善に関して
(1)技術専門職員の昇格について
Ⅳ. 非常勤教職員の労働条件改善に関して
(1)非常勤教職員対象の採用試験について
(2)非常勤教職員の病気休暇等について
(3)期間業務教職員の雇用継続について
(4)パート教職員のボーナス支給について
(5)障害学生支援室職員の待遇改善について
第二回団体交渉も物分かれ
こんなに下がる教職員の給与
大学法人 7月に給与削減強行のかまえ
削減を緩和する工夫も姿勢もなく
伊藤賢一(書記長/荒牧支部)
すでに「ぐんだいタウン」号外(5月28日付)でお伝えしているように,5月25日に,田学長,井手理事ら大学法人側と団体交渉を行いました。組合からは7名が参加しました。以下で,組合側の要求と大学法人の回答をお知らせします。
Ⅰ. 給与・手当に関して
(1)人事院勧告・臨時特例による給与削減について
昨年の人事院勧告(平均0.23%の削減)ならびに震災復興のための国家公務員給与臨時特例(平均7.8%の削減)への対応について,組合は本学教職員の給与を削減しないように要求していますが,今回大学法人は国家公務員並の給与削減を提案してきました。学長から提案理由の説明がありました。
学長があげた理由は,①昨年6月ならびに10月の閣議決定で,国立大学法人を含む独立行政法人も,「自律的・自主的な労使関係の中で,国家公務員の給与見直しの動向を見つつ,必要な措置を講ずるよう要請する」という言い方で,国家公務員並に給与を削減することを求められていること,②さらに本年5月11日の岡田副総理や安住財務大臣が国立大学法人の対応が遅れていることを問題視する発言をしていること,③国家戦略会議では国立大学をめぐる情況は厳しく,運営費交付金の削減や大学の統廃合を含む高等教育改革が議論になっていること,といった政治的な状況についての説明で,これらを考えると現在120億円以上の運営費交付金が入っている群馬大学が何もしないわけにはいかない,というものでした。
とはいえ,国家公務員とまったく同じにはできない,として次の3点の配慮を表明しました。(a)国家公務員の場合,人事院勧告は平成23年4月に遡って,臨時特例による削減は4月から行っているが,本学の場合は過去に遡ることはせず,本年7月からの適用とし,6月の期末手当はこれまで通りの額で支給する,(b)附属病院の人材を確保する目的で,コメディカルと看護職員は一旦下げるけれども,手当をつけて補填し,医員と研修医については削減しない,(c)附属学校園の教員は県との交流人事で来ているので,手当を新設して対処する,ということです。
つまり一部を除いて国家公務員並みに給与を削減するということで,これは労働契約法でいう明らかな不利益変更です(大学法人もそのことは認めています)。同法9条では,労働者の不利益になるような就業規則の変更を,労働者と合意することなく行うことはできない,と定められていますし,同10条では,労働者の合意がないままで不利益変更を行う場合の条件として,(i)変更後の就業規則を労働者に周知させ,(ii)就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときに限る,と定めてあります。
今回の給与削減の提案は,運営費交付金が減額された等の経営上の判断ではありません。今年度の群馬大学の運営費交付金はすでに配分額が決定しており,減らされたわけではありません。いわば教職員の給与を「自律的・自主的な労使関係の中で」削減してその分を返納することが強制されています。結果を押しつけておいて責任だけ大学法人に負わせようとする構造そのものが非合理なものです。今回の給与削減によってどのくらい返納することになるのか示すように組合は求めましたが,大学法人はその資料も総額も示しませんでした。
また,削減幅が大きく,教職員の生活にあたえる影響も甚大であることから,十分な説明をして教職員の理解を求める必要がありますが,大学法人は教職員に対して6月初めに提示して7月1日から削減しようとしています。組合は拙速な削減を行わず,すべての事業場で教職員に対する説明会を開催し,十分な周知期間をとるように求めました。
また,国家公務員と全く同じ引き下げ,ということは,大学法人として教職員の暮らしを守るための経営努力をまったくしていないことになります。たとえば,岡山大学では,9.77%の削減幅を6%に,7.77%を4%に,4.77%を2%に圧縮するという提案が大学側からあり,さらに特別休暇の増加などの措置もとられています。静岡大でも地域調整手当1%上乗せし,勤勉・期末手当10%上乗せが提案されました。島根大でも削減幅を圧縮しています(7.65%,6.08%,3.73%)。新潟大は国の給与減額率を3%減じています。滋賀医科大学では,地域手当を5.5%から10%に引き上げていますし,茨城大では4%引き上げています。名古屋大では毎月一日の特別休暇を新設しています。
これに対して大学法人群馬大学は,上記の「配慮」だけで済まそうとしており,後述するように,組合から出ている労働条件の改善要求に対しても否定的な態度に終始しています。労働条件の改悪を緩和しようという姿勢が見られず,これでは教職員の労働意欲は削がれるばかりです。
また,組合はこのような大幅な不利益変更には,労働契約法が定める手続きが必要であることも主張しました。どうしても引き下げなければならない合理的な理由を労働者に周知することが必要です。すべての事業場で全教職員に対する説明会を開催し,十分な周知をはかる説明責任が大学法人にはあることを,組合は重ねて強調しました。
(2)事務・技術職員の賃金水準実態の改善について
国家公務員の給与を100とした場合のライパイレス指数で,群馬大学の事務・技術職員は84.7です(平成22年度)。もともと国家公務員より15.3%も低いわけですが,これをさらに「国家公務員に準じて」引き下げようというわけです。
事前交渉の席で大学法人側は「地域手当によって地方の国立大学はどうしても低くなる。同じ賃金表でやっているのだから,群馬大学が他の地方国立大学よりも低いということはないはずだ」,と主張しました。確かに,宇都宮大(88.0)や埼玉大(89.5)よりは低いですが,新潟大(83.0)よりは若干高く,茨城大(84.7)とは同水準になっています(東京都内の大学はおおむね90台)。
とはいえ,労働条件を改善・あるいは改悪を緩和しようと工夫している他の大学に比べると,群馬大学の姿勢は見劣りすると言わざるを得ません。
(3)夜間看護手当・負担の大きい職員の調整額・資格を保持する職員の手当について
組合は,夜間看護手当の増額,患者と直接接する部門でとくに負担の大きい仕事についている職員(歯科衛生士,理学療法士,作業療法士,言語聴覚療法士,視能技術職員,心理療法士,臨床工学技士)への調整額の支給,労働安全衛生・安全管理にかかる資格(作業環境測定士,作業主任者,電気主任技師,高圧ガス保安管理者)を保持している職員への手当の支給を要求しました。さらに,そもそも恒常的に人員が不足していて荷重労働が常態化している部署に人員増をはかることも重ねて要求しました。
これは組合が以前から要求していることで,上記の手当の新設・増額については2009年3月の大学法人と組合との合意事項として,大学法人はその必要性を認め優先順序を検討することになっています。
これに対して大学法人は,現在の状況からすると手当の新設・増額は無理だが,看護師を増やす努力を昨年の秋以降相当しており,改善を図っている,と回答しました。
組合は重ねて,他の国立大学法人で増額している例をあげながら,夜間看護手当の増額を求めましたが,大学法人側は「他の大学がすべて出ているわけではないので,今すぐ増やすということは考えていない」と回答しました。
この論法でいくと,群馬大学の労働条件は国立大学法人の中で最下位でかまわないということになります。引き続き,ねばり強く改善を求めていくことが必要です。
(4)入試手当について
入試問題の出題・採点に係わる教職員への入試手当の支給も,以前から組合が要求しているものです。大学法人は,前回の団交を受けて次の役員会で検討しましたが,部局によって負担がまちまちなので一律に出すと却って不公平になる,として支給しませんでしたが,国立大学の中ではもはや出していない方が少数派です。組合はあらためて入試手当の支給を求めました。
これに対して大学法人は,「入試が本来業務であることは間違いがないし,入試以外の業務でも大変なことがあり,ここだけが不公平というわけではない。入試のやり方も,本学の場合はバラエティに富んでいて,もう少し見ないとかえって不公平が拡大するのではないか」と消極的な回答をしました。
これに対して組合は,他大学でもそれほど大した額ではないし,大学全体で考えてもそれほど大きな負担でないにもかかわらず士気を高めることはできる方法なので,重ねて検討を要求しました。
Ⅱ. 教員の労働条件改善に関して
(1)若手教員向けの国際学会参加のための学内ファンドについて
組合は,学長裁量経費で,採択率の高い,若手教員(特に任期制の助教等)の国際会議のための学内ファンドの創設を要求しました。とくに任期のある若手教員は厳しい競争にさらされており,毎年国際会議に参加する必要があることへの配慮を求めたものです。
大学法人は,科研費に応募しても不採択だった教員には,学長裁量から若手の助成ということで前からやっている,と回答しました。
これに対して組合は,今の制度で採択率を上げるか,採択率の高いファンドを創設するかして,若手教員の待遇改善を求めました。
大学法人はこれに対して「国立に対する風当たりが非常につよくて,研究については競争を勝ち抜いてきたものにしか支給しない,という風潮の中で,本学では研究費をなんとか減らさないようにしてきた。今年度は部局長裁量経費を増やしているので,部局で対応して欲しい」と回答しました。
(2)教員の任期制について
組合は,教育基盤センターや国際交流教育・研究センター教員の任期制を廃止し,常勤職員とすることを求めました。不安定な身分の下での教育研究は,本人はもとより学生や大学にとっても弊害の方が大きく,改善が必要だと訴えました。
これに対して大学法人は,同センター教員については,もともと任期制という条件で就職しているという点と,多様な人材を確保するという目的から,大学としては今すぐ変えることは考えていない,と回答しました。
組合は,働く者の側からすると,子どもの教育やローンのことなど,任期のことがあると安心して働けない面があることを重ねて強調し,見直すチャンスがあれば見直すべきことを伝えました。
Ⅲ. 技術職員の労働条件改善に関して
(1)技術専門職員の昇格について
組合は,技術専門員について全員5級以上とし,特に技術部長については6級以上とすること,中堅以上の職員に対し技術長以上の役職ポストとは別に技術専門員のポストを確保・増員することを求めました。また,技術専門職員の4級昇格までの期間を短縮することも求めました。
これに対して大学法人は,「技術部長」という役職は群馬大独自のもので,級が逆転することもありうるが,それはいたしかたないこと,と回答しました。
Ⅳ. 非常勤教職員の労働条件改善に関して
(1)非常勤教職員対象の採用試験について
組合は,非常勤教職員対象の採用試験合格者を大幅に増やすことを求めました。とくに,募集時点で合格者数や採用予定者数が明記されていないので,こうした情報を募集要項に掲載することを求めました。
これに対して大学法人は,定員の問題があるのでたくさんは採用できないが,前年の合格率を掲示することは検討する,と回答しました。
(2)非常勤教職員の病気休暇等について
組合は,非常勤教職員の病気休暇を90日に延長することと,「子の看護休暇」・「介護休暇」を有給とすることを求めました。これまでの交渉で群馬大学は「十分な措置をとっている」という態度を表明していますが,非常勤として働く者としては「満足して働ける」状況には決してなっていない,「子の看護」や「介護」については,常勤も非常勤もないのではないか,と主張しました。
これに対して大学法人は,常勤で雇える人の数が減っており,非常勤教育員の貢献が大きくなっていることは確かなので,病気休暇と子の看護・介護休暇については前向きに検討する,と回答しました。
(3)期間業務教職員の雇用継続について
組合は,期間業務教職員本人の希望,能力および現場の必要に応じて,常勤職員への移行を前提として雇用を継続することを求めました。
これに対して大学法人は,採用は基本的に「採用試験」によって公平に行うべきで,特別の配慮を行うつもりはない,と回答しました。
(4)パート教職員のボーナス支給について
組合は,パート教職員に対してもボーナスを支給することを求めましたが,大学法人はこの要求を拒否しました。
(5)障害学生支援室職員の待遇改善について
組合は,障害学生支援室で雇用している,手話通訳技術を有する職員の待遇改善を求めました。専門性の高い職種であるにもかかわらず,期間業務教職員・パート教職員として不安定な雇用であり,時給単価もきわめて低い状態にあることを訴えました。手話通訳やパソコンテイクのような情報保障業務は,肉体的・精神的負荷が大きく長時間の連続的な作業が禁じられていますが,本学では過重な勤務をせざるを得ない状況にあります。
これに対して大学法人は,実態把握が十分でない面もあるかもしれないので,事情を把握してみる,と回答しました。
第二回団体交渉も物分かれ
第一回の団体交渉で,組合は資料を示さない大学法人の態度は不誠実である,と申し入れましたが,6月6日に大学法人側から資料の提示がありました。翌日,学内専用のホームページ掲示板に載ったものと同じものです。
これを受けて組合は大学法人群馬大学に対して団体交渉を申し入れ,両者は給与削減問題に関する今年度2回目の団体交渉を6月14日に行いました。この時に組合が提出した要求項目は,①今回の給与削減はかつてない著しい不利益変更であるので,労働契約法10条で定める合理的な根拠を示すこと,②人材確保のために附属学校園ならびに附属病院職員に手当を創設しているが,なぜ一般の教職員にこうした配慮がないのか,納得のいく説明をすること,③どうしても給与削減が避けられない場合には,手当や休暇など他の部分での労働条件の改善をはかること,という3点で,これに加えて,すべての事業場で教職員に対する説明会の開催を要求しました。
これに対する大学法人の回答は次の通りです。①労働契約法10条の「不利益変更の合理的な理由」としては,前回団交で大学法人側が示した閣議決定や閣僚の発言を繰り返しただけでした。教職員への周知に関しても,大学ホームページに記載しており,また,過半数代表者にも伝えているのでこれで十分,という認識で,説明会も行うつもりはないようです。
実際には今回の削減について知らされていない職員も多い,との組合側の指摘に対して,とくに病院職員については確実に伝える方法を考える,と回答しました。
②病院職員と附属学校園教員以外の教職員になぜ人材確保のための手当がないのか,という点については,他の教職員が不要だという訳ではないが,今回はどうしても必要不可欠な場所に措置を講じたと繰り返すのみで,まともな説明はありませんでした。
③手当や休暇で待遇改善をという要求については,「休暇などは検討する」という回答でしたが,いつまでに結論を出すかは明示しませんでした。
組合側は,給与削減の法的根拠があいまいであることや,削減幅を圧縮するさまざまな工夫が可能なはずであることを訴えましたが,双方の主張はどこまでも平行線をたどり,またしても物別れに終わりました。
大学法人の態度として問題なのは,「多額の税金を投入して維持する必要があるのか」「優秀な人材が民間に流出するならそれはそれでめでたいことだ」,などという国立大学に対するバッシングとも言うべき偏見を何度も引き合いに出し,労働者として当然の権利の主張を恫喝するような態度を見せていることです。国立大学に対する厳しい見方が一部に出ていることは事実としても,この問題はむしろ労使双方が強調して地域や社会に訴えるべき問題であって,これを労働者への圧力に使う大学法人の態度は使用者としてきわめて不誠実なものだと言わざるを得ません。
こんなに下がる教職員の給与
大学法人群馬大学が7月1日から実施しようとしている給与削減に関しては,前回本誌号外(5月28日付)でお伝えした通りです。
具体的にいくら給与が減るのか,全大教の試算がありますのでお示しします。
臨時特例による年間削減額 (期末勤勉手当▲10%含む) |
人事院勧告による ①現給保障減額 ②本給減額 | |
教授 54.5歳 | 1,017,600円 本給10%削減 |
①111,650円 ②35,090円 |
准教授 45.7歳 | 688,543円 本給8%削減 | ②27,115円 |
事務係長 44.8歳 | 490,602円 本給8%削減 | ②22,330円 |
この表によると,教授で100万円以上,准教授で70万円以上,事務係長で50万円以上も年収が減ることになります。上の数値は,1年間適用されたものなので,7月1日からの9カ月しか適用されない群馬大の場合は,2012年度に関しては削減幅がもう少し小さくなりますが,2013年度はこの水準の削減がかかることになります。
6月2日(土)の組合尾瀬旅行は無事に終了いたしまた。お天気にも恵まれ,水芭蕉とリュウキンカが丁度見頃でした。参加されたみなさん,お疲れさまでした。
今回ご都合が合わなかったみなさんも,次回はぜひご参加ください。
定期大会について
去る6月25日に,本年度の組合定期大会が開催されました。タウンの発行が間に合わず大変申し訳ありませんでした。