Ⅱ-71号 2015.6.15 発行 | |
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6月8日に大学法人と団体交渉
大学法人 病院問題への対応を説明
作題手当など待遇改善の必要性を認識
群馬大学教職員組合広報部
去る6月8日に組合と国立大学法人群馬大学は団体交渉を行いました。今回組合が提示した要求項目は,医学部附属病院の医療事故をめぐる教職員への説明,教職員の待遇改善(入試手当の増額・新設,とくに負担の重い病院職員と資格を取得した技術職員の待遇改善),年俸制切り換えに伴う不利益変更への対応です。以下では,要求項目(太字で示します)毎に交渉の内容をお伝えします。
A. 群馬大学に関する事項
群馬大学の附属病院の腹腔鏡手術に関する問題に関して。特定機能病院の取り消し等を含めて財政的影響が少なくないように見受けられる。現状と見通しについて説明を求めたい。特に雇用維持に関する見通しを伺いたい。必要な事項を群馬大学教職員に説明すべきある。
医学部附属病院で起きた腹腔鏡手術に関する重大な医療事故に関しては,組合としても徹底した原因の解明と合理的な対策にもとづく信頼回復を求めるものですが,教職員に対する大学側からの説明も情報公開もなされておらず,現場の職員の間では不安が広がっています。組合は,大学法人としてこの問題をどのように受け止めているのか質しました。
これに対して平塚学長は交渉の場で「みなさんに大変ご迷惑・ご心配をおかけしている,申し訳ない」と理解を示し,病院長から職員向けに説明を行うことになっていること,財政状況が不透明であるという理由で教職員の解雇は想定しておらず,さまざまな努力で今回の事態に対処する考えを明らかにしました。
財政見通しに関しては,特定機能病院の承認取消し,先進医療患者の受入停止の関係で数億円は下らない額の減収が見込まれ,さらに保険適用申請の問題で監査が入っていることから診療報酬の返還を求められる可能性もあり,大学法人としても見通しがなかなか利かないという説明がなされました。現在は教育・運営経費を上半期5%留保して各部局等に配分し,学長裁量経費のうち学部長裁量は全額,教育研究社会貢献は44%留保している状態だということです。
原因究明のために立ち上げた調査委員会は現在追加の調査を行っているとのことですが,これとは別に病院の改革委員会がガバナンスの面からの検討を行っており,こちらは夏ごろまでには結果が出るだろうとの見通しが示されました。
組合としても,今後も引き続き注視していきたいと思います。
B.職員の待遇改善
① 入学試験における作題・採点手当を新設すること。
② センター試験の経費が担当教職員に正当に支払われていないので,正当に支払うこと。支払うことが不可能な場合には,センター試験受託費の使途を明らかにし,その根拠を示すこと。
③ 身体,精神的に負担の大きい病院勤務医療従事者に関して,人材確保のためにも適切な手当や調整額を支給すること。
- 夜間看護手当の増額(例えば1,000円以上程度)。
- 患者と直接接して業務を行うことを常例とする医療技術者(歯科衛生士,言語聴覚士,理学療法士,作業業法士,視能訓練士,臨床工学技士)や退院支援を行う医療ソーシャルワーカーに対して診療放射線技師,臨床検査技師と同等の調整額を支給すること。
- 医療従事者の各種認定に対する手当を支給すること。
④ 技術職員の諸手当について。労働安全衛生・安全管理にかかる資格(作業環境測定士,作業主任者,電気主任技術者,高圧ガス製造保安責任者)を取得して業務にあたっている職員に対して,高度な社会的責任及び作業内容,この業務に関わることで,大学にかける経費上の負担を最小限としてきたこと等を考慮の上,手当を支給すること。
これまでも本紙『ぐんだいタウン』でお伝えしてきたように,上記の①〜④の事項は組合が継続して団体交渉で取り上げ,要求してきたものです。
①の入試に関する手当については組合が粘り強く交渉した結果,2012年から一律1万円が支給されることになりましたが,本学の場合あらゆる入試業務すべてを対象にしたもので,とりわけ作題・採点を担当している教員からは不満が寄せられています。作題・採点手当を新設するようにとの要求に対して大学法人側は,入試業務は学部や担当する科目によって負担がさまざまに異なるので,個別の担当者の負担に応じようとすると却って不公平になるという従来からの考えを示すとともに,財政状況が不透明な中で今年度増額できる状況ではない,としました。
しかし平塚学長はそれに加えて,出題責任者にかかる負担が特に重いので,将来的には手当を厚くすることも考慮したい,と明言しました。入試は大学教員の本来業務なので手当の必要がないと主張していたこれまでの執行部の見解よりも,われわれの主張に歩み寄る姿勢を示したといえます。組合側は他大学の状況も引き合いに出し,さらなる検討を要求しました(本紙『ぐんだいタウン』U-63号〔2012年10月9日付〕で以前お伝えしたように,すべての国立大学で支給されているわけではありませんが,たとえば新潟大学は問題作成主任委員に10万円,茨城大学は主任委員に7万2千円支給しています)。
②の大学入試センター試験の取扱いについては,群馬大学はセンター試験と個別学力試験を一体と考えているので組合の主張は当たらない,として要求を拒否しました。大学入試センターが積算に用いている数字は,試験監督の手当として「〔受験生〕50人につき2人,1時間3,430円,18時間分」となっていますが(前述『ぐんだいタウン』参照),本学の場合,運用は他の試験と一体で行っているのでこれがそのまま試験監督に支給されるわけではない,ということです。
これに対して組合側は,センター試験の受託費はセンター試験を実施するために支払われているもので,これを他の用途に用いたら流用になるのではないか,他の大学ではもっと手厚く手当されているのに,論理的にも金額的にも納得がいかない,と主張しました。さらに組合は,センター試験は土・日に行われるため群馬大学では担当教職員が振替休日をとることになっていますが,実質的に勤務を休める時期ではないので有名無実化していることも主張しました。センター試験は卒論と修論の間の時期にあたり,書類上は休日になっていても実際には出勤して仕事をしている教員は少なくありません。
この件について大学法人側は,他大学の例なども参考にして検討することを明言しました。組合が2012年に調べたときには,新潟大学1万円,宇都宮大学1万2千円,埼玉大学1万4,400円(いずれも試験監督1日の手当)となっています。
また,試験監督中に体調を崩した受験生に対応して感染症に罹った場合は労災が認められるのか質したところ,条件を調査する,という回答でした。
③の病院勤務の医療従事者への手当増額・新設も,以前から組合が繰り返し主張してきたことです。例えば医学部附属病院の看護師は二交代勤務となっていて,夜間に勤務すると1回6,800円支給されていますが,群馬大学周辺の大学病院では7,100〜8,800円,国立病院機構では7,600円が支給されます。今回の交渉で大学法人側は,国の基準に応じた手当を支給しているし,看護師の負担を考慮して増員してもいるので,これ以上の手当の増額・新設には応じられない,と回答しました。
組合は,看護師の中には時短勤務の人もいるので通常勤務の看護師に負担が集中している実情を説明し,数字に現れないところで過重負担になっており,このままでは人材流出が懸念されることを指摘しました。これに対して大学法人側は,実際を調査して検討する,と回答しました。
④の労働安全衛生・安全管理にかかる資格を取得している技術職員に対する正当な評価も,以前から組合が主張してきたことです。これに対して大学法人側は,色々な資格を取って貢献してくれている職員がいることは認識しているので,すぐには難しいが,将来的には手当が出せるかどうか考えていきたい,と返答しました。
組合は,特に機械工作系では学生の安全を確保するための人手が不足しているので,今のままでは重大な事故が起こる可能性が大きいとして早急な対応を求め,大学法人側も検討を約束しました。
C.給与について
① 60歳以上教授の年俸制移行について。不利益変更はないとの説明だったが,給与が減額になったとの声がある。 税金分や年金の変動についても対処しているのか説明を求める。
昨年組合が大学法人に出した「年俸制に関する公開質問状」に対する返答では,「年俸制に切り換えたことによる不利益変更はない」ことになっていましたが,実際には減額になったケースがあると聞いています。組合はこの件についても大学法人に質しました。
大学法人の回答は,大学が教職員に給与を支払う時点では不利益にならないようにしているが,それ以外のことはわからないので,単年度あたりの所得が増えたことにより税金が増えてしまった等の事情については把握していない,もしそうしたケースがあれば相談に来て欲しい,というものでした。組合はさらに,保育料や高校授業料の扱いは保護者の年収に応じて変わる場合があるので,月給制から年俸制に変わったことによる不利益が生じるケースがあることも指摘しました。
大学法人はこの件も含めて相談に応じる,としています。モデルケースについて照会があれば対応を示す,という回答でした。この件に関しては今後組合からも広報していきたいと考えます。
また組合は,大学法人が今年3月に教職員に提出を求めた「誓約書」に関する問題を取り上げました(事前に出した要求項目には入っていません。詳細は本紙の次の記事を参照してください)。団体交渉の場では,大学法人側にはこの問題は伝わっていなかったのでこれから検討する,ということでした。
今後の対応を注視したいところです。
全体として,大学の財務状況が不透明な中で,現在の教職員の待遇に問題があるという認識は共有できたように思われます。教育や診療の場がかかえる問題点を経営陣に伝えることは,とりわけ組合が果たすべき重要な役割ですが,今回の団体交渉でもいくつか重要な問題を伝えられたといえます。これ以上の人材流出を避け,働きがいのある群馬大学を作っていくためにも,大学執行部の英断を期待したいと思います。
組合はこれからも粘り強く大学法人と交渉し,労働環境の改善に努めていきます。みなさんの声を組合にお届けください。
大学法人は法令順守を 〜「誓約書」の問題点〜
前田 泰(社会情報学部)
〔団体交渉でも取り上げた「誓約書」の問題点について,社会情報学部の前田先生にご寄稿いただきました。〕
法律学担当教員としての疑問
3月に群馬大学長宛ての誓約書(以下,「群馬大学誓約書」と呼びます)の提出を求められましたが,法律学担当の教員として,その内容に疑問を感じました。主な問題点は,「5 故意又は過失により群馬大学に直接又は間接に損害を与えた際は,その賠償責任を負うこと。」という条項にあります。以下ではこれを「本条項」と呼び,私が感じた疑問を具体的に説明させて頂きます。
問題点1:民法709条との抵触
民法上の損害賠償(不法行為)責任が生じる要件と,本条項との実質的な違いは,「直接又は間接に」という文言が本条項にあることです。民法上の責任が生じるためには,加害者の行為と被害者の損害との間の「因果関係」が必要であり,これは原則として「直接的な因果関係」を意味しています。
これに対して本条項は,間接的な因果関係で損害賠償責任を生じさせようとしています。かつてスモン病や新潟水俣病のような,多数の深刻な被害者を救済すべき必要性の高い大規模訴訟で,間接的な立証により因果関係が認められたことがあります。群馬大学誓約書の本条項は,教職員をこのような加害企業に,そして大学を被害者に置き換えることと法的には同じになります。
さらに責任の内容(法的効果)としての損害賠償の範囲(賠償金額の算定)についても,間接的な損害まで含む内容になっていますので,上記の大規模訴訟の加害企業以上の責任を教職員に負わせようとしています。
問題点2:国家賠償法1条との抵触
この規定は,①公務員の職務上の行為により生じた損害については国・公共団体が賠償責任を負うこと,および,②その場合には,当該公務員に「故意または重大な過失があったとき」に限り,国・公共団体に「求償権」が発生することを規定しています。求償権というのは,肩代わりした損害賠償金を返せと請求できる権利です。この規定の解釈として,①職務上の行為について公務員個人は責任を負わないこと,および,②国立大学法人にも適用されることが認められています。
これに対して群馬大学誓約書の本条項は,過失による損害賠償責任を教職員に負わせようとしています。単に「過失」という場合は「軽過失」を意味し,その内容は「注意義務の違反」です。これに対して国家賠償法の責任の要件である「重過失」は「注意義務の著しい違反」です。つまり本条項は,国家賠償法で保護されている公務員(国立大学法人の職員を含む)に,その保護を外した重い責任を負わせようとしています。
ただし,この法律が想定している場面は,所属組織に対する公務員の加害行為ではなく,第三者に対する行為です。「だから本条項はこの法律に抵触しない」と言われるかもしれませんが,しかし,教職員が第三者に損害を与えたために大学が国家賠償法上の責任として被害者に損害賠償をしたときは,結局,教職員が大学に損害を与えたことになって,誓約書の本条項に該当しますから,やはり本条項はこの規定に抵触します。
誓約書の法的意味
誓約書は契約書と同じです。昔は外科手術に際して「事故が起きても医師の責任を追及しない」旨の誓約書を患者が書かされたこともありましたが,このような一方的に不利(相手に有利)な免責約款は無効だと解されています。では,今回の誓約書のように教職員の責任を加重する(教職員に不利で大学に有利な)約款はどうでしょうか。無効だと言いたいところですが,正直なところ,わかりません。万一の場合に被害者に有利な責任を加害者が負う約束は,必ずしも無効とは言いきれないようにも思えます。つまり,本条項は法的に有効である可能性があります。
しかし,もし大学がこの誓約書を利用して教職員に不利な措置をとれば,それが「違法」な行為となる可能性があります。例えば,本条項の通りに重過失のない教職員に間接的な損害の賠償責任を負わせたり,誓約書の不提出を理由に科研費の申請(継続を含む)を認めないというような場合です。このときには教職員に損害が発生し,大学の行為に(不法行為法上の)違法性が生じる可能性があります。
今回の誓約書は廃棄
ネットで検索すればわかりますが,通常の誓約書で本条項に該当する箇所は「故意または重過失により会社に損害を与えた場合には」となっています。民法と国家賠償法の遵守を前提にしているからです。民間の会社に国家賠償法は適用されませんが,普通の労使協定がある企業はこれを遵守しています。
この誓約書の存在だけで,従業員を食いものにするブラック企業と同視されることはないでしょうが,群馬大学を攻撃するための材料にはなり得ます。今回の誓約書は即座に廃棄するべきです。どうしても誓約書を提出させたいのであれば,普通の書式に従うべきです。ただしその場合には法律通りの内容ですから,誓約書の提出は法的には無意味です。学長と担当部署に,法令を遵守する精神に満ちた英断を期待しています。
新人書記のご紹介
この度,新しく書記局に池田桂子さん(写真・右)が入り,高草木書記(左)と2人体制になりました。
職場の労働問題や各種共済のご相談等,何かありましたら組合事務所にお気軽にお越しください。
〈自己紹介〉
5月19日より組合事務室で働かせていただくことになりました,池田と申します。初めてのことばかりでご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが,よろしくお願いいたします。
《定期大会のお知らせ》
- 日時: 2015年6月29日(月)19:00〜21:00
- 場所: 昭和キャンパス 多目的アメニティ講義室
* 定期大会では,この1年の活動を振り返り,今後の活動について話し合います。
* 定期大会には,各支部から代議員が参加します。
* 組合員のみなさんには,あらかじめ議案書をお渡しします。