II-75号 2017.1.24発行 | |
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群大ノ未来ツクル 新しい現実 新しい挑戦 |
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委員長ごあいさつ
大学運営に教職員の声を
豊泉周治(委員長/教育学部)
今期,委員長を務めます。教育学部社会科教育講座の豊泉周治です。専門は社会学。どうぞよろしくお願いします。この間しばらく学部運営に携わっており,やっと正規の組合員に戻れたと喜んでいましたが,まさかの委員長職ということで,立場を180度変えて大学執行部と向き合うことになりました。
この間の「大学ガバナンス改革」によって,国立大学の運営は大きく様変わりし,教育研究を担う教職員の声を大学運営に反映させることがたいへんに難しくなりました。重要なことほど学長や役員会の「裁定」(あるいは事実上の「裁定」)で決定され,教員組織の一元化や任期制の拡大,年俸制の導入など,教職員に関わる重大な変更が教職員にまともに諮られることなく実施に移されてきました。学校教育法が変えられ,教授会が大学運営についてのチェック機能を果たせなくなったいま,教職員組合だけが唯一,その役割を担うことができます。
法人化後の中期目標・中期計画期間の第3期に入り,国立大学の危機が叫ばれていますが,なかでも群馬大学は医療事故の影響でとりわけ深刻な状況にあります。労働環境,教育研究環境の悪化が進んでいます。教職員の力を結集して,労働環境,教育研究環境の改善に努めなければなりません。大学運営に教職員の声を反映させることが,大学の将来を切り開くためにも大切なことだと思います。組合員の皆さん,ともに頑張りましょう。
平成28年6月と12月に団体交渉
人事院勧告の給与水準引上げをめぐって攻防
前年度人勧対応 群馬大学は全国で"ワースト2"
群馬大学教職員組合広報部
教職員のみなさんにお伝えするのが遅くなりましたが,組合は平成28年6月30日と12月27日の2回にわたって国立大学法人群馬大学と団体交渉を行いました。ここでは12月27日の団体交渉を中心にその概要をご報告します。
A. 給与について
昨年(平成28年)8月の人事院勧告は,民間との格差(0.17%)を埋めるため平成28年4月に遡って給与水準を引上げ,ボーナスも0.1月分引上げる,という内容でした。これに対する群馬大学の対応は,「給与水準の引上げは平成29年1月1日から実施し,例外的に平成28年12月のボーナスは国と同水準として支給する」というものです。組合は,少なくとも平成28年4月に遡って給与水準の引き上げを行うよう求めました*1。
*1 尚,27年の人事院勧告も同様に4月に遡っての給与水準引上げを求めるものでしたが,群馬大学は医療事故の影響等による財政事情を理由に1年遅らせて28年4月から適用しています。今回の対応は,前回より3カ月分改善されたといえます。
組合側は資料として,文部科学省が出している「国立大学法人等の役職員の給与等の水準(平成27年度)」を示し,群馬大学教職員の給与水準が全国的にみても,また北関東の国公大学と比べても低いことを訴えました。
職員/平均年齢 | 教員/平均年齢 | 医療系職員 | |
茨城大学 | 577.2万円/★41.6 | ☆935.0万円/50.8 | ― |
筑波大学 | ☆618.6万円/☆45.5 | 932.7万円/49.3 | ☆503.9万円/☆34.1 |
筑波技術大学 | 591.3万円/43.4 | 971.1万円/☆53.0 | ― |
宇都宮大学 | 584.0万円/43.2 | 879.8万円/49.3 | ― |
群馬大学 | ★560.5万円/43.1 | ★780.6万円/★46.5 | ★449.9万円/★34.2 |
(埼玉大学) | (634.6万円/44.2) | (973.0万円/50.0) | ― |
これに加えて組合は,非常勤職員の給与水準の引上げも要求しました。具体的には,時給1,000円に満たないパート職員の時給額を引き上げることを求めました。
組合: 4月に遡らないという群馬大学の対応は全国的には異例なことである。前回(平成27年)の人勧で求められた給与水準の引上げは,本学では1年遅れで実施されたが,4月に遡らなかった大学は全国でも数大学しかなく,さらに28年4月から始めた大学は2大学しかない。本学の対応は「ワースト2」だった。地域手当が3%しかつかないという事情も理解しているが,最低でも4月まで遡るべきではないか。
大学法人:できるだけのことはしたいと思っているが,病院の事故の影響が大きく,今年の決算は赤字になりそうだ。残念ながら要求にお応えできない。示された表で本学の給与が低くでているのは,地域手当の影響と病院の職員が比較的若いことに加えて,本学では60歳以上の給与が高い教授に年俸制を取り入れており,これが表から省かれているので見かけ上低くなっているはずだ。
組合:4月まで遡ったら,大学にとってどれだけ負担が増えるのか。
大学法人:かなり高額になる。正確な数字は確認して後でお知らせする。
組合:人事院勧告が指摘している一月あたりの民間との給与較差は708円。これを埋めるための給与水準引上げなので,ボーナスを入れても年に1万円強にしかならないはず。本学の職員が2,300人として2,000万円程度ではないか。日本のほとんどの大学が4月まで遡っているのでできないということはないはず。
大学法人:他の大学は人を削っているのでやれている。本学はなるべく人を削っていないので苦しい。
組合:群馬大の給料が安いので,いい人材が集まらないだけでなく,ここ数年は50歳前後の人が流出している。マネジメントの一環として,給与問題を考えて欲しい。
次は,非常勤職員の給与水準引上げについて。政府も最低賃金時給1,000円という方針を掲げている。970円で打ち止め,というパート職員が結構いるはずなので,改善してほしい。
大学法人:非常勤職員は職種によって単価が違う。指摘されているのは事務補佐員のことだと思うが,正規職員の俸給表を基準に算定しており,1,000円にすると職員の時間単価を超えてしまう。
組合:正規職員はボーナスもあるので,それを入れると変わってくるはず。
大学法人:正規職員と非常勤職員は性質が違うので,俸給表も違う。
組合:働き方を見直すのが時代の流れになっているので,大学としても問題意識をもって取り組んでもらいたい。
B. 教職員の待遇改善について
組合は,教職員の待遇改善として,①入学試験における作題・採点手当の新設,②入試に関わる超過勤務手当の支給,③障害学生サポートルームの業務および体制の改善,④病院勤務医療従事者に対する適切な手当や調整額の支給(夜間看護手当の増額,歯科衛生士・言語聴覚士・理学療法士・作業業法士・視能訓練士・臨床工学技士・医療ソーシャルワーカーに対する調整額の支給,医療従事者の各種認定に対する手当の支給),⑤労働安全衛生・安全管理にかかる資格(作業環境測定士,作業主任者,電気主任技術者,高圧ガス製造保安責任者)を取得して業務にあたっている技術職員に対する手当の支給,を求めました。
このうち,②と③については,6月の団体交渉でも取りあげており,大学法人側も「調査し検討する」と回答しました。
組合:これまでも要求してきたが,作題・採点への手当を作って欲しい。作題・採点は非常に気をつかうので,事実上,超過勤務が発生している。入試は本来業務ではあるが,超過勤務しないとやっていけないレベルの仕事だ。前回の団交でも調査検討するという回答をもらっている。
大学法人:入試手当は一律1年間1万円,ということでお願いしているが,相当過重な労働で申し訳ないと思っている。とくに作題については心配しており,なんとかしたいと思っているが,どこの範囲までどのくらいつけるか,もう少し検討させてもらいたい。北関東三大学で共通の問題を作ろうという話も出ていて,そういうことで負担を減らすことも検討している。
組合:数学の採点などは4日間缶詰で,ずっとやっている。さすがに他の業務に支障をきたすレベルだ。インセンティブという点でも,大変なところから付けていくべきではないか。超過勤務手当を認めてほしい。
大学法人:入学者選抜業務でみなし労働時間内の処理が困難であることが明らかである場合には超過勤務手当を支給することになっている。明らかにみなし労働時間では処理できないことが客観的に確認できれば支給できる,と定められているので,今年度の入試業務を精査して検討したいと思っているところ。申し訳ないが時間をいただければ,と。
組合:他大学でどうやっているのかも,合わせて確認してもらいたい。
障害学生サポートルームの問題に移る。前回の団交で確認したように,実態調査をして検討する,ということになったのでどうなったのか教えて欲しい。発達障害やメンタルヘルス不調の学生が増えていて,対応が大変だと聞いている。何より学生が不利益を被ることになるので,有資格者の職員がいないと回らないという状況だ。
大学法人:学務部と人事労務課で話し合って,改善できるところはやっている。28年4月に障害学生サポートルームの人が替わって大変なことがあるので,様子をみましょうということになっている。音声認識アプリの導入等,やっていることはある。サポートルームには常勤の職員がいないので,学生支援課の副課長が支援することになっている。
組合:有資格者の件は。
大学法人:どこかを削らないといけないので,現在の状況では無理である。
組合:必要なときには,何らかの形で病院の職員につなげるとか通路を作っておいてもらえるといいと思うので,その点もお願いする。
大学法人:外部の臨床心理士が電話するとか,ケアをするように提携してはいる。
組合:病院職員の待遇改善に移る。周りの関東の国立大学病院で上がっていないのは群馬大学だけで,入院で急性期を診ている病院では1万円近く夜間看護手当てを出していることから,実際に人材が流出していることは肌で感じている。増額をお願いしたい。検査と放射線だけに調整額がつくというのも,現在の水準からみると納得できない。
大学法人:夜間手当は病院長から話があって,夜勤専従勤務を希望する方にお願いして,一般の人の負担を軽減しようということにしている。そんなに流出していないのでは。
組合:組合のオリエンテーションをしているが,毎年100人単位で新人が入ってくる。ということは100人単位で辞めている,ということ。7:1看護の関係もあるが,全体に年齢が下がっている印象がある。新人が多いことは悪いことではないが,中堅やベテラン層が辞めていくということは,重傷の患者さんを若いスタッフ中心で看ることになり,大学病院としてはリスク面としても問題になる。国立高崎病院が新規で募集しているが,夜間看護手当が11,000円つく。それに対して6,800円だとやはり流出は止まらない。新人しかいない状態になるのは困るので,実態を調べてほしい。
大学法人:夜間看護手当については,人事院規則と同じ設定になっていて,それが6,800円ということ。他大学の調査だと,32大学中22大学は同じなので,決して低いということではない。例えば医療従事者の俸給の調整額は,退職手当とか全体に影響してくる。
組合:準拠しているということは最低だということで,近隣の大きな病院は軒並み高い。群馬大学病院で育てたナースが他に逃げていく,というのは,結果的によくないと思う。この辺は経営判断でもある。ぜひ改善をお願いしたい。
次の技術職員の問題に移る。これも毎年要求していることだが,法人化したときに本学の安全衛生体制は必ずしも充分でなかったところ,技術部の職員が努力して一般の企業並の安全衛生体制をつくってきた。作業環境測定を外注すれば年間1千万円ぐらいかかるはずだが,技術職員がそこをカバーしている。それほど高額の手当を要求しているわけではないので,なんとかお願いできないか。
大学法人:技術職員を去年2名採用したので,少しは改善したかと思っている。来年4月からさらに2名増える。財政的余裕があればやりたいという気持ちがあるが,もうすこし情勢をみないと本体が危なくなるので,もう少し様子をみさせてほしい。検討はできると思うが,すぐに出すのは難しいと思う。
組合:直接手当が支給されるというは大事だが,心理的な承認欲求という面もあるので,お金がない分は時間的余裕をつくるとか,業務の見直しも含めてお願いしたい。
C. 群馬大学に関する事項
組合は群馬大学に関する事項として,①非常勤教職員の雇用期間限度の見直し案,②軍学共同,③大学設置基準改正に伴う附属病院の切り離し,の3点について大学法人の考えを質す要求を出していました。①非常勤教職員の雇用期間限度を一律に5年(非常勤講師等は10年)とする,雇用期間限度の見直し案に関するものですが,これは平成25年施行の改正労働契約法が目的とする「雇止めの不安の解消」に逆行する不当なものと言わざるをえず,組合としては撤回を求めています。②は「防衛省研究公募(安全保障技術研究推進制度)」への大学としての対応を質すものです。こうした研究については人類への平和と安全への寄与という科学の目的に反することが危惧されており,この研究への応募を行わないという決議を行った大学や学部もあります。③は,文部科学省が大学設置基準第39条第1項を改正し,附属病院(医学・歯学教育を行う大学は附属の病院を設置することとして義務付けている)を大学から切り離すことができるよう変更しようとしている問題について,大学法人の見解を求めたものです。
当日は,残り時間の関係で①についてだけ取り上げ,②・③については後日文書で回答をもらうこととしました。
組合:11月28日に本学理事から「非常勤職員の雇用期間限度見直し案について」という文書が出てきた。非常勤職員は5年,ただし非常勤講師等は10年,ということだが,この提案の基になっている労働契約法は,非常勤職員の雇用の不安定をどうやって解消するか,というのが目的なので,これを理由に5年で打ち切るというのは趣旨と逆のことをやっている。大変不名誉なことで,撤回が適当と考える。
大学法人:現在は各学部等に照会して意見をいただいているところ。3年の期間業務の方が逆に5年いられる方向で改正していくつもりである。
組合:各職場に5年を超えてずっとパートの形で貢献している職員がいる。長期に活躍してくれるパートの人がいなくなると各学部の現場ではたいへんなデメリットになる。法律の趣旨を逆用するようなことしないで,本来の趣旨を活かすような形で検討してもらいたい。
大学法人:検討させていただく。
組合:昭和地区で最近,非常勤職員に「非常勤職員の雇用継続に係る審査に関する実施要項」という文書が配付された。評価でクビを切られるのではないか,と職員は不安に思っている。本部で認識しているのか。
大学法人:話は承知している。基本的に非常勤職員については,必要なところに必要な期間だけ配置するということが前提になっている。審査について定められていなかったので,必要な人は審査を受けて,必要な期間いてもらう,そうでない場合は辞めてもらうということを明確にしたもの。
組合:本来こういう新しいルールをもちこむときには,当該の非常勤の人たちと話合いがあってしかるべきではないか。
大学法人:細かいところまでは聞いていないが,当然説明はしていると思う。
組合:気になる表記もあるので,細かい部分を本部で確認した方がよいのではないか。
大学法人:本部として内容は確認したいと思う。
後日、人事院勧告通りに平成28年4月に遡って給与水準を引き上げた場合の影響額は2,100万円強であることが分かりました。これを受けて組合は、人事院勧告の4月遡及を改めて申し入れました。組合側も国立大学法人の財政状況の厳しさについてはよく承知していますが,本学の予算規模からして,総額で約2,100万円という金額は捻出の工夫の余地のある金額ではないかと考えます。
これに対する回答は、団体交渉で未回答だった上記②・③に対する回答と一緒に、平成29年1月6日付で送付されてきました。次ページにこれをお示します。
大学法人 給与水準引上げの4月遡及を拒否
軍学共同については慎重姿勢
〈大学法人・群馬大学からの回答〉
軍学共同について 本年4月に「群馬大学科学者行動規範」(平成19年4月1日学長裁定)を一部改正し、研究者自身の研究成果が、意図に反して、破壊的行為に悪用される可能性があることを認識する等の旨を新たに策定しました。 本年度に防衛装備庁が実施した「安全保障技術研究推進制度」については、公募要領の中で「本制度で委託する研究は、…将来の装備品に適用できる可能性のある萌芽的な技術を対象」としており、軍事利用につながるそれがあると判断して、本学の研究者による応募を行わないこととしたものです。 平成29年度において同様の趣旨の公募がある場合は、その目的・趣旨等を鑑みて、本学としての取り扱いを適切に判断したいと考えています。 なお、日本学術会議において安全保障と学術について検討中であると承知しており、これらの議論を注視し、本学としての今後の取扱方針等について判断していきたいと考えています。 大学設置基準改正に伴う附属病院の切り離しについて この件については、平成28年10月26日付けで文部科学大臣から、中央教育審議会会長へ「大学設置基準の一部を改正する省令の制定について」諮問が行われ、平成28年12月14日付けで、中央教育審議会会長から文部科学大臣に「これを適当と認めます。」との答申があったところです。 この対応については未定です。 人事院勧告の対応について 本学では、従来から、人事院勧告への対応(月例給の引き上げ引き下げ等)については、給与規則改正日以降の適用としており、遡及適用はしておりません。 この人事院勧告対応については、財政状況も踏まえ役員会等で何度も議論しております。その際には、俸給表の引き上げを行う場合には、平成29年1月からであれば、影響額が540万円、平成28年4月に遡る場合には、影響額が2,160万円として議論しておりました。 ちなみに、勤勉手当の成績率については、国の支給割合に合わせ、平成28年12月期の支給割合を0.9月と(0.225月引き上げ)しました。その影響額は2億2,500万円となります。 なお、本年度収支決算は医学部附属病院の医療事故の影響により大幅な赤字が見込まれています。 よってこれ以上の対応は困難です。 |
全国大学高専教職員組合(全大教)を通じて確認しているところによれば,前年・平成27年度の人勧に即した給与改善を27年4月遡及で実施した大学等は確認できている59法人中53法人でした。さらに4月遡及を実施しなかった6法人中,実施を28年4月にまで遅らせた大学は2法人で,群大はワースト2という結果でした。28年度の対応についても,ある大学が組合に説明したところでは,62法人が国家公務員同様で,7法人がそれ以外の対応との説明があったとの連絡が入っています。いずれにしても,28年4月遡及を行わず29年1月実施とする本学の対応が,国立大学法人のなかでも例外的な対応であることは明らかです。すべての公務員と比べて,そして圧倒的大多数の国立大学法人職員と比べて,本学教職員が冷遇されていることになり,この事実は,給与改善額の多寡以上に,本学教職員の群馬大学と大学執行部への大きな失望を招きかねないものです。
組合は今後も、少なくとも他の国立大学法人職員並みの労働条件は保障するように大学法人に求めていきます。今回大学法人は,入試の作題・採点業務や障害学生サポートルームの労働状況について調査・検討することを明言しました。また,附属病院の医療技術者や労働安全衛生に従事している技術職員の待遇改善も継続して訴えていきたいと思います。
何より現場にいる労働者の声を大学法人に届けることが組合の責務と考えます。みなさまの声をこれからも組合にお寄せください。