号外 2007.10.22発行

不払い残業で労基署が群大に立入調査

各職員は, 「自己規制」せずに, 本当の残業時間を申告しよう

さる9月19日,本学事務局(荒牧)および医学部総務課に,前橋労働基準監督署による立入検査が行われました。さる部局で,連日深夜に及ぶ残業が続くのを見かねて内部告発があった,とも伝えられています。

かねてから長時間過密労働解消・不払い残業根絶を訴えて運動を進めていた本組合では,この事態を重視し,他の諸課題とあわせて10月17日に石川総務部長,岡田人事労務課長ら経営側(労働問題の責任者)と会談し,問題の経緯と今後の対応について質しました。本号外では,労基署からの調査の問題に絞って,現状と私たちの主張をお伝えします。

国立大学であいつぐ不払い残業・労基署からの指導

下表は,国立大学における不払い残業をめぐる労基署からの指導と,それを受けての残業代支払いにつき,新聞記事データベースから主な事例をまとめたものです。このほか,金額等詳細が分からなかったので載せていませんが,広島大,島根大などでも事例があります。なかには複数回指導を受けている「悪質」な大学もあります。


【表】法人化後の国立大学における労基署からの指導・残業代支払い事例
時期
(新聞報道)
大学名人数支払総額時期
(新聞報道)
大学名人数支払総額
2004.12信州大 4200万円2006.6香川大595人1億3200万円
2005.4滋賀医大469人9900万円2006.8大分大140人1924万円
2005.11京都大481人3253万円2006.9筑波大354人1億200万円
2006.4九州大 数億円(推定)2006.12室蘭工大80人3665万円
2006.4長崎大(2回)531人6700万円2007.5三重大146人1400万円
2006.4佐賀大90人1370万円2007.10東北大234人996万円
2006.5鹿児島大287人475万円

大学は今年6月〜9月の時間外勤務の実態を調査

総務部長らは告発の詳細については語りませんでしたが,立入検査の事実を認めた上で,19日には労働時間管理に関する書類等の提出,パソコンの稼働状況調査などが行われ,当日不在だった総務部長が翌日労基署に出向いて改めて説明を行ったことを明らかにしました。そこではまず今年6月〜8月の超過勤務の実態の詳細な調査を要求されたとのことですが,現在,大学は「自主的に」調査期間を6〜9月に延長した上で,各部局に調査を指示しています。調査は,監督者が個々の職員(常勤・非常勤問わず全員)と面談する等の形で行われ,超過勤務時間については,それを否定する明確な証拠がない限り,基本的に本人の自己申告が尊重されると総務部長は明言しました。面談に際して「自主規制」を促す現場の管理者もいる,という話が伝わってきていますが,到底許されることではありません。それでは問題は解決せず,群馬大学はいっそうの痛手を負いかねないので,経営側もそんなことは望んでいません。

経営側の現在の計画では,11月下旬を目途に調査を済ませ,年内には超過勤務手当の支払いを済ませたいとのことです。

請求できるのは過去2年分,36協定は残業代支払いの「上限」ではない!

さて,この問題をめぐっては現在各部局で調査が進行中です。しかし,その中で,関連法規等について不正確な情報が流れたり,人事担当者に誤解があったりするケースもあります。そこで,ここで労働者の権利を守り,労働への正当な対価を受け取るための基本的な知識を整理しておきたいと思います。

まず,今回の事態にあたっての調査期間は今年6〜9月ですが,この期間がイコール「残業手当の請求が可能な期間」なのではありません。賃金(退職手当を除く),災害補償等のいわゆる「労働債権」の時効,つまり,その期間を超えると労働者の請求権がなくなる期間は2年間(労働基準法第115条。退職金の時効は5年間)であり,今回の調査期間よりはるかに長いものです。ちなみに,時効になった場合でさえも使用者が支払わなくてもいいだけのことで,支払ってもいいのです(つまり,使用者の責任感次第なのです)。

また,一部には,「36協定で定められた時間外労働の上限(年間360時間,月45時間,日6時間)が,超過勤務として申告できる上限」という誤解もあるようですが,これも違います。17日の組合との会談でも総務部長が明言していますが,今回の調査の,また支払いの対象となるのはあくまでも実際の超過勤務時間であり,36協定の範囲内か否かは関係ありません。36協定上の上限を超えたからといって支払わないならば,法人側は,上限を超えて働かせたという違法行為の上に,働かせたのに払わないという違法行為を上乗せすることになってしまいます。職員のみなさんには,「自己規制」することなく,正確な時間を胸を張って申告し,手当を受け取ってくださるよう訴えます。

業務過剰・人手不足という構造的な問題にメスを! ――再発防止にむけて

17日の会談で,総務部長からは,不払い残業横行の原因として,「人事担当者・監督者の法令に対する認識の甘さ」「国家公務員時代からの『公務』としての使命感の継続」といったものが挙げられました。しかし,このような認識(とくに後者)では,事態の根本的な解決はおぼつかないでしょう。

本組合がくりかえし訴えているように,法人化後,「中期目標・中期計画」に代表される無意味な書類仕事,過酷な定員削減,過剰な収益の追求,不適切な人員配置などによって,多くの職場では慢性的な人手不足が生じています。この点にメスを入れる――業務にみあうだけの人員を配置するか,人手が増やせないなら業務量の削減に真剣にとりくむ――ことなしには,問題の根本的な解決は決してありえません。不払いが解消されたとしても,過労死が出てしまったら取り返しがつかないのです。

職員のみなさんには,今回の調査に対し,超過勤務時間は「自己規制」抜きにありのままをお答えいただくことと,不払い残業・長時間過密労働などについて,ご要望を本組合までお寄せいただくことを,重ねてお願いします。

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