Ⅱ-82号 2024.8.23 発行 | |
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再雇用問題で群馬大学と緊急交渉
退職直前の変更めぐり激しく応酬
これで安心して働ける職場といえるか
前回本紙号外(3月15日付)でお知らせしたとおり,組合は令和5年度以降に定年退職となる事務職員の再雇用に係る運用の見直しについて国立大学法人群馬大学に対して緊急の団体交渉を申し入れ,3月26日に交渉を行いました。遅くなりましたが,本号でこの交渉についてお伝えします。
組合:かつてないほど,組合と過半数代表者に職員の声が届いている。大学としては該当する職員に説明会をしたということだが,報復人事の恐れがあってその場では何も言えなかった人もいるし,自分が退職後にいくらもらえるのか数字としてわからなかったとも聞いている。大学法人側の言い分はわかっているつもりだが,教職員が軽んじられているようで,教職員の側からは,自分たちは頑張ってきたのに群馬大学には必要なかったのかと,感情的な部分で不安定になっている。やる気やモチベーションの面で,職員の気持ちが大学から離れている。
大学法人:組合と大学の認識には乖離がある。わかりにくいということだが,質問があれば,その都度書面で回答しており,大学側には不満のような話は来ていない。一人の職員から「よくわからない」という意見をもらったが,手続きに関してであり,本質的なことではなく,その人には説明をして「よくわかった」と返事をもらっている。説明会の場で「わからない」という人もいなかった。また,報復人事を行うことはない。今年度退職する事務職員6人に対しては,人事労務課長と担当係長が個別に面談した。その中で6人は理解しているという話であり,わからないという話は大学側にはきていないと認識している。もらえる金額がわからないということについては,常勤の再雇用教職員で約370万円,非常勤である短時間雇用教職員で約260万円と2つの数字を示している。
組合:その金額を教えてくれと依頼したが,Zoomの画面でしか見ることができなかったので,紙で渡してほしかったとも聞いている。
大学法人:投影しているほか,口頭でも説明した。
組合:なぜ紙で出せなかったのか。
大学法人:示した時点では,最終的な決定ではなく,案の段階での説明であったので,その金額が一人歩きすると却って混乱すると考え,渡していなかった。役員会で決定した後に,紙で配布している。
組合:配布されたのは退職の2週間前であった。12月の段階で出してもらえればよかった。大学側に言えないことを組合に言ってきている。なぜ資料をもっと前に出せなかったのか。
大学法人:決定までのスケジュール上,このタイミングになった。
組合:役員会には半年前に諮ることはできないのか。
大学法人:調整に時間がかかった。
組合:調整に時間がかかるのであれば翌年度からでよいではないか。
大学法人:本件について過半数代表者に説明をしたあと,職員にも説明してほしいという依頼があったため,年齢に関わらず聞きたいという人に対して,各事業場1回ではあるが,他の事業場でも聞けるような形で説明会を開催した。質疑応答も途中で打ち切るということはせず,回答したうえで,理解できない場合は何度も説明してきたので,理解してもらっていると考えている。
組合:それだけ自信があるのであれば,資料を出せたのではないか。「変更があるかもしれない」と記載すればよいのではないか。
大学法人:それがどのように出回るか分からず,持ち帰って配布され,その後変更があると「言っていることが違う」と混乱してしまうと考えた。
組合:あとで変わる可能性があるということか。
大学法人:役員会での決定が最終決定になる。時間が切羽詰まったことは認識している。そのため案の段階で早めに周知した方がよいということで説明した。
組合:「案の段階なので変わる可能性がある」と書いておけばよい。
大学法人:翌年度以降はしっかりと対応したい。
組合:認識に隔たりがあるのはそのとおりで,大学としては説明もして,その後質問もなく,対象の6名に関しては,個別に説明もしたのでわかってもらったという理解か。
大学法人:個別に説明したうえで,後日,わからないことがあれば質問してほしいと個別の説明を,もう一度実施している。
組合:それはわかった。ただその後,組合にはこれだけ意見が来ていることをどう考えるか。大学が信用されていないのではないか。いくら説明されても,大学には意見を言えないということではないか。例えば「報復人事のようなことがあると恐いし,実際に自分はそういう例も見た記憶がある」と言っている人もいる。これはその人の認識だが,大学に対する不信感が大きい。
わかった,わからないということで言うと,待遇がわからないということだけではなくて,そもそもなぜ自分たちがこんな目にあわなければならないのかという面が大きかった。
大学法人:そこがわからないということであれば,4月以降,丁寧に説明していく。
組合:理解してもらうことは大事だが,もっと大事なのは納得してもらえるかどうかと考える。組合が懸念しているのは,群馬大学の弱体化である。安心して働いて,研究者としても成果が出せる,教育面でも充実している,それが理想的な地方大学のあり方と考える。このままでは15年後には,職員はついてきていないのではないか。
大学法人:群馬大学の弱体化の懸念はそのとおりだが,今ここで対策しておかないと,群馬大学の力はもっと弱体化してしまうと考えている。それを防ぐために色々な対策をしており,本件もそのうちのひとつだ。中期計画の第5期(2028年度)以降,好循環に移れるようにしている。
組合:この点は共通理解ができていない。組合もこの話を伝えたいとは思っているが,現在のところは定年延長や,給与の7割水準措置もない(1)。将来的に定年延長をするのか,給与も人事院勧告どおりに支払うのか,経営側として努力するというメッセージがないのが不信感の原因でないか。法的には定年延長しなくても再雇用すればよいが,国家公務員は10年後には65歳に引き上げていく,という話になっている。好循環にもっていって,いずれはそういうふうにしたいのかどうか,そこの見通しは全くついていないのか。
大学法人:過半数代表者には説明しているが,第5期以降の財政の好循環により,これでいけそうだということになったときは,定年延長をしないというわけではない。そのときの財政状況をみながら,定年延長を導入するという判断をするということもありうるという説明をしている。
組合:ただ,15年後の再雇用対象者が多く,このままでは雇えなくなるので,今から新しい制度に移行するということは(2),15年後の人たちまでは定年延長しない,と多くの職員は理解するのではないか。15年後の対象者が61名であり,このままでは新規の雇用ができないので,全員常勤の再雇用教職員としては雇えない,という話だった。「仮にこのままの状態でいけば」ということが伝わっていない。
大学法人:今の状態が続いたらこうなる,というのが配布している紙である。15年後に何人が再雇用の対象になるのか,という事実を明らかにしているもの。
組合:15年後のことを考えて,今年60歳になる人が非常勤である短時間雇用教職員にならざるをえないという措置が決定事項だと職員の側は言っている。10年かけても好循環にいかないと15年後の人は全員短時間雇用教職員になってしまうという説明だったら,この10年で頑張らなければという話になるが,その時のことを考えて今から減らさなければ,ということになっている。
大学法人:説明が足りていないのかもしれないが,これは客観的な年齢構成を示しているだけで,15年後にこの人たちを短時間雇用教職員にするということではない。
組合:ただ,来年度から新制度になることの理由付けとしてこれが出てきている。
大学法人:第5期以降に好循環になったら必ずしもこの限りではない,またその時に判断するということは説明している。わかりにくいということであれば,4月以降の説明で文書に入れる。
組合:資料が配られなかったということは,事務職員だけの問題ではなくて,噂でこの話を聞く人は,自分たちも60歳になったらこうなると感じていて,職員全員の問題として捉えている人がいる。資料がないので正確な情報がよくわからない。組合としても聞いた話のメモがあるのみなので,とにかく早く資料を出してもらわないと困る。組合は大学と教職員の橋渡しのような側面があるが,どうなっているのかと聞かれてもきちんと説明できず,まだ決定事項ではないということになり,大学が保留していることに不信感が広がっている。これはお金の問題だけではなく,経営面でも重要な問題だ。ある種のモチベーションのコントロールが上手くいっていない。長く勤めている人は,病院の医療事故以来,不利益感,不公平感をずっと感じてきた。だから組合としても近隣大学との比較のデータや,ラスパイレス指数(3)を出したりして,群馬大学は全国でも恵まれていない大学なのでなんとかしてほしいと大学にいっても,無い袖は振れないということで,不利益感,不公平感が積もりに積もっている。だから大学と職員の距離ができてしまって,今回も大学側には何も言わないかもしれないが,組合には言ってくるという形で出てきている。それを問題として捉えて,どうするのかということを考えてほしい。
大学法人:医療事故の時期も含めて,本学の財政がどうなっているのか,という詳しい説明が欠けている時代が過去にあった。昨年の執行役員会議では,本学の財政や他大学との比較について,各学部長等に説明した。ただ,学部長等から教職員に降りていってないのが残念。確かに構成員が本学の状況を知ることができる,という状況を作らなければならないと大学側も考えている。その努力をするべきだというご指摘は受け入れ,実施していきたい。そのうえで,特に第5期以降のことがわからないという質問には,過半数代表者に対する回答の中で,第5期に向けて好循環を図っていきますというメッセージを入れている(4)。この説明を丁寧に,という努力も今後するつもりである。
組合:大学は伝えたといって,確かに書いてあるが,それがうまくモチベート,エンカレッジするものになっているかというと,やり方が下手だと思う。うまく響かないと好循環を目指してもマイナスになってしまう。みんな出て行くことを考えるとよくないので,大学としてよく考えてほしい。
大学法人:分かりやすい発信をする努力は当然しなければならない。
組合:この5,6年はみんなトップダウンに慣れてしまって,教員も群馬大学を良くしようというよりは,さっさと出て行こうとしている。教員間のコミュニケーションが足りないのだと思うが,それに時間を使うなら出て行く努力をするようになってしまっている。
大学法人:大学を良くしようと思ってやっているのは,組合も大学執行部も同じ。協調してうまくやっていきたいと思っている。工夫が足りない部分は指摘してもらいたい。
組合:組合からの質問状に未来のことについて書いてある。とくに40代,50代の働き盛りの人々のモチベーションが下がることを心配している。この人たちに,頑張れば夢があるということを学長から話してほしい。学長はプロジェクトの話をしていたが,財政の話もしてもらった方がいいと思う。
大学法人:執行役員会議で説明しているが,キャンパス単位で説明会をやった方がいいのかもしれない。
組合:大学の財政構造が分かっていない人が多い。なぜ人事院勧告どおりにできないのか,ということも分かっていない。
大学法人:財政のことは隠すつもりはないが,過去には説明が足りないことがあったかもしれない。構成員のみなさんに事実を知ってもらうことが大切だと思う。
組合:1月に研究費の追加がきたことにも,配分のタイミングに怒っている人はいる。
大学法人:大学が留保している場合と,学部で留保している場合がある。
組合:話は変わるが,過半数代表者をしていると36協定の例外の報告がくるが(5),長時間の残業に頼っている部分が本当に大きいと感じる。退職者の後任が埋まらないというケースも多い。群馬大学という職場の魅力が感じられないのではないか。それが定年退職後の見通しが立ちにくいとなると,ますますモチベーションが下がってしまうのではないかと心配になる。学生からも群馬大学に受かったけれども公務員になる,という話を聞いたりもする。悪循環が起きないようにどういう対策をとるのか,示して欲しい。 12月に話を聞いて,3月にこうなったと言われるのは少し厳しい。今年の人は個別に説明したということだったが,あと数年経ったらどうなるの,という話をよく聞いた。上の人に話しても,下に降りてくるとは限らない。
大学法人:5年スパン,10年スパンで定年退職後の雇用計画について説明が必要だということはよくわかった。財政状況についても説明が必要だということもよくわかったので努力したい。今後も群馬大学のために協力してやっていきたい。
注
(1)人事院勧告に従い,国家公務員は令和5年度から,定年年齢を2年に1歳ずつ段階的に引き上げることになっており,令和5年度は61歳,令和13年度には65歳となります。また,61歳に達する年度から基本給は7割支給されます。
・人事院解説ページ
https://www.jinji.go.jp/content/900039255.pdf
(2)大学法人側の説明資料には,
※ 現在の再雇用者は「19名」
※ 5年後の再雇用対象者は「32名」
※ 10年後の再雇用対象者は「46名」
※ 15年後の再雇用対象者は「61名」
と朱書きされた男女別の職員構成を表す図(年齢ピラミッド)が記載されています。
(3)国家公務員の行政職(一)適用職員の給与水準を100として比較した国立大学等の事務・技術系職員の賃金水準(ラスパイレス指数)は,法人化後一貫して100を下回り続けてきました。令和2年度の本学職員の指数は,事務・技術職員は90.5,医療職員(病院看護師)は93.9です(いずれも年齢・地域・学歴勘案)。
(4)「財務上の問題であれば,新たな施策により,どのように改善するのか,計画を示す必要がある」という過半数代表者からの質問に対する大学法人からの回答は以下のとおりです。 「本見直しは,①年齢構成の適正化,②安定的な新規採用の確保を目的に行うものです。財務上の問題のみに対応するものではありません。
見直しにより経費削減効果も生まれてくると考えますが,このほか,強みのある分野への重点投資やURAなど研究支援人材の採用を行い,競争的資金の獲得増に向けた方策を講じています。こうした外部資金を活用した好循環により,第5期中期目標期間には収入増となるよう目指しており,このことを執行役員会議において全学にお示ししております。併せて,今回の説明会においても説明しています。」
(5)法定労働時間(1日8時間,週40時間)を超える時間外労働や,休日労働を従業員に命じる場合,企業は従業員の代表者と協定を結び労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。これを定めている労働基準法第36条に基づき,この協定届は「36(サブロク)協定」と呼ばれています。36協定では,原則として月45時間(年360時間)を超える時間外労働はできませんが,特別の事情がある場合には,年6回まで例外が認められています。